2019
11
株式会社サンレー
代表取締役社長
佐久間庸和
即位の礼に創立記念式典
儀式の力を改めて知ろう!
●即位の礼
10月22日、「即位の礼」こと「即位礼正殿(そくいれいせいでん)の儀(ぎ)」が無事に執り行われました。
即位の礼は、日本の天皇が践祚(せんそ)後、皇位を継承したことを国の内外に示す一連の国事行為たる儀式で、最高の皇室儀礼とされています。中心儀式となる「即位礼正殿の儀」は、諸外国における戴冠式、即位式にあたります。
即位の礼後に、五穀豊穣を感謝し、その継続を祈る一代一度の大嘗祭(だいじょうさい)が行われます。即位の礼・大嘗祭と一連の儀式を合わせ、「御大礼」とも称されます。
皇嗣(こうし)が新たに皇位に就くことを「即位」といいますが、古代では神へ寿詞(よごと)を奏上し、神璽(しんじ)を献納する事を中心とした、簡素なものでした。平安時代に「皇位の継承」である「践祚」と「即位」が別の儀式として行われるようになり、唐風の儀式が江戸時代まで続きました。即位にかかる儀式全般を即位儀礼といいますが、これは皇嗣が即位する「践祚の儀」と、即位したことを内外に宣下する「即位の礼」に分かれます。
●神話的存在としての天皇陛下
『儀式論』にも書きましたが、「わたしたちは、いつから人間になったのか。そして、いつまで人間でいられるのか」という根源的な問いの答えは、すべて儀式という営みの中にあります。わたしは、人間は神話と儀式を必要としていると考えています。 社会と人生が合理性のみになったら、人間の心は悲鳴を上げてしまうでしょう。そして、天皇陛下ほど「神話」と「儀式」をその存在で体現されている方はおられません。
天皇陛下は神話的存在です。
なんといっても日本人のアイデンティティの根拠は、神話と歴史がつながっていることです。神話により日本人は、現在の皇室の祖先が天照大神(あまてらすおおみかみ)につながることを知っています。『日本書紀』の一書によれば、天照大神は天を支配し、月読命(つくよみのみこと)は海を支配し、須佐之男命(すさのおのみこと)は地を支配したとされています。天照大神はいまも伊勢神宮に祀られており、その子孫が皇室です。
●儀式的存在としての天皇陛下
また、天皇陛下は儀式的存在です。
代々の天皇陛下は、自ら稲を栽培され、収穫が終わると新嘗祭(にいなめさい)、神嘗祭(かんなめさい)で、今年の収穫のご奉告をされます。新嘗は、新しくできた米を嘗(な)めるお祭。神嘗は、神々が新穀を嘗めるお祭りです。天皇陛下が即位後初めて行う新嘗祭だけは、「大嘗祭(だいじょうさい)」と呼び、その儀式は遠く神代の昔から毎年続いています。ちなみに、伊勢神宮の20年に一度の式年遷宮は、20年に一度の周期で行う大神嘗祭でもあるのです。
改めて考えてみれば、天皇陛下ほど儀式と切っても切れない深い関係にある方もおられないでしょう。天皇陛下の行事の中には「祭祀」がありますが、これは「皇室祭祀」とも呼ばれるものです。これには新嘗祭など重要な「大祭」と、それよりも重要度が落ちる「小祭」があり、大祭の場合には、天皇陛下が神主の役割を果たされます。
●世界最強の儀式的存在
また、日本国憲法では、天皇の国事行事として「儀式を行ふこと」が定められています。1952年の閣議決定によれば、それに相当する唯一の儀式が「新年祝賀の儀」です。
儀式には、宗教的なものと世俗的なものがありますが、政教分離の原則がある以上、国事行為として天皇陛下が行われる儀式は後者に限られます。天皇陛下が実際に行われる儀式としては、首相や最高裁長官の「親任式」、大綬章や文化勲章の「親授式」、「信任状捧呈式」などがあります。信任状捧呈式とは、着任した海外の大使(特命全権大使)や公使(特命全権公使)が、派遣元の元首からの信任状を提出する儀式で、これだけでも1年間に30回から40回くらいあるといいます。まさに、天皇陛下は世界最強の儀式的存在であると言えるでしょう。
現在、即位の礼は「剣璽等承継の儀」、「即位後朝見の儀」、「即位礼正殿の儀」、「祝賀御列の儀」、「饗宴の儀」の5つの儀式から構成され、これらは全て国事行為です。
●会社にとって儀式の意味とは
さて、11月18日にはわが社の創立記念式典が行われます。会社にとって、儀式とはどういった意味を持つのでしょうか。
会社が主催する儀式や行事は入社式や退社式、創立記念式典や社長就任披露宴など、多種多様なものがあります。それらは一括して「会社儀礼」と呼ばれていますが、経済活動の主体である会社がなぜ儀礼を行うのでしょうか。
儀式には「かたち」が必要です。結婚式とは、不完全な男女の魂に「かたち」を与えて完全なひとつの魂として結びつけること。葬儀とは、人間の死に「かたち」を与えて、あの世への旅立ちをスムーズに行うこと。そして、愛する者を失い、不安に触れ動く遺族の心に「かたち」を与えて、動揺を押さえ悲しみを癒すこと。このように儀式のもつ力とは、「かたち」によって発揮されます。
そして、会社儀礼のような集団儀礼においては「かたち」を繰り返すことが何よりも重要になります。何年も何年も同じやり方で儀式を繰り返すことは、若い人々に自分が今聞いていることは何年も前に年長者たちが聞いたことだという確信を与え、年長者たちには、未来の人々が自分の知っていることを知ることになるという確信を与えます。これによって、集団の精神的な縦軸がまるで姿勢の良い背骨のように真っ直ぐに立ちます。儀式の順序の確実さは、反応を強要することによってではなく、共通知識の生成を助けることによって組織の絆を強めると言えるでしょう。
わたしたちは儀式の力を改めて知った上で、冠婚葬祭業を極めたいものです。
大礼と創立記念祝いたり
儀式なくして日の本はなし 庸軒
10月22日、「即位の礼」こと「即位礼正殿(そくいれいせいでん)の儀(ぎ)」が無事に執り行われました。
即位の礼は、日本の天皇が践祚(せんそ)後、皇位を継承したことを国の内外に示す一連の国事行為たる儀式で、最高の皇室儀礼とされています。中心儀式となる「即位礼正殿の儀」は、諸外国における戴冠式、即位式にあたります。
即位の礼後に、五穀豊穣を感謝し、その継続を祈る一代一度の大嘗祭(だいじょうさい)が行われます。即位の礼・大嘗祭と一連の儀式を合わせ、「御大礼」とも称されます。
皇嗣(こうし)が新たに皇位に就くことを「即位」といいますが、古代では神へ寿詞(よごと)を奏上し、神璽(しんじ)を献納する事を中心とした、簡素なものでした。平安時代に「皇位の継承」である「践祚」と「即位」が別の儀式として行われるようになり、唐風の儀式が江戸時代まで続きました。即位にかかる儀式全般を即位儀礼といいますが、これは皇嗣が即位する「践祚の儀」と、即位したことを内外に宣下する「即位の礼」に分かれます。
●神話的存在としての天皇陛下
『儀式論』にも書きましたが、「わたしたちは、いつから人間になったのか。そして、いつまで人間でいられるのか」という根源的な問いの答えは、すべて儀式という営みの中にあります。わたしは、人間は神話と儀式を必要としていると考えています。 社会と人生が合理性のみになったら、人間の心は悲鳴を上げてしまうでしょう。そして、天皇陛下ほど「神話」と「儀式」をその存在で体現されている方はおられません。
天皇陛下は神話的存在です。
なんといっても日本人のアイデンティティの根拠は、神話と歴史がつながっていることです。神話により日本人は、現在の皇室の祖先が天照大神(あまてらすおおみかみ)につながることを知っています。『日本書紀』の一書によれば、天照大神は天を支配し、月読命(つくよみのみこと)は海を支配し、須佐之男命(すさのおのみこと)は地を支配したとされています。天照大神はいまも伊勢神宮に祀られており、その子孫が皇室です。
●儀式的存在としての天皇陛下
また、天皇陛下は儀式的存在です。
代々の天皇陛下は、自ら稲を栽培され、収穫が終わると新嘗祭(にいなめさい)、神嘗祭(かんなめさい)で、今年の収穫のご奉告をされます。新嘗は、新しくできた米を嘗(な)めるお祭。神嘗は、神々が新穀を嘗めるお祭りです。天皇陛下が即位後初めて行う新嘗祭だけは、「大嘗祭(だいじょうさい)」と呼び、その儀式は遠く神代の昔から毎年続いています。ちなみに、伊勢神宮の20年に一度の式年遷宮は、20年に一度の周期で行う大神嘗祭でもあるのです。
改めて考えてみれば、天皇陛下ほど儀式と切っても切れない深い関係にある方もおられないでしょう。天皇陛下の行事の中には「祭祀」がありますが、これは「皇室祭祀」とも呼ばれるものです。これには新嘗祭など重要な「大祭」と、それよりも重要度が落ちる「小祭」があり、大祭の場合には、天皇陛下が神主の役割を果たされます。
●世界最強の儀式的存在
また、日本国憲法では、天皇の国事行事として「儀式を行ふこと」が定められています。1952年の閣議決定によれば、それに相当する唯一の儀式が「新年祝賀の儀」です。
儀式には、宗教的なものと世俗的なものがありますが、政教分離の原則がある以上、国事行為として天皇陛下が行われる儀式は後者に限られます。天皇陛下が実際に行われる儀式としては、首相や最高裁長官の「親任式」、大綬章や文化勲章の「親授式」、「信任状捧呈式」などがあります。信任状捧呈式とは、着任した海外の大使(特命全権大使)や公使(特命全権公使)が、派遣元の元首からの信任状を提出する儀式で、これだけでも1年間に30回から40回くらいあるといいます。まさに、天皇陛下は世界最強の儀式的存在であると言えるでしょう。
現在、即位の礼は「剣璽等承継の儀」、「即位後朝見の儀」、「即位礼正殿の儀」、「祝賀御列の儀」、「饗宴の儀」の5つの儀式から構成され、これらは全て国事行為です。
●会社にとって儀式の意味とは
さて、11月18日にはわが社の創立記念式典が行われます。会社にとって、儀式とはどういった意味を持つのでしょうか。
会社が主催する儀式や行事は入社式や退社式、創立記念式典や社長就任披露宴など、多種多様なものがあります。それらは一括して「会社儀礼」と呼ばれていますが、経済活動の主体である会社がなぜ儀礼を行うのでしょうか。
儀式には「かたち」が必要です。結婚式とは、不完全な男女の魂に「かたち」を与えて完全なひとつの魂として結びつけること。葬儀とは、人間の死に「かたち」を与えて、あの世への旅立ちをスムーズに行うこと。そして、愛する者を失い、不安に触れ動く遺族の心に「かたち」を与えて、動揺を押さえ悲しみを癒すこと。このように儀式のもつ力とは、「かたち」によって発揮されます。
そして、会社儀礼のような集団儀礼においては「かたち」を繰り返すことが何よりも重要になります。何年も何年も同じやり方で儀式を繰り返すことは、若い人々に自分が今聞いていることは何年も前に年長者たちが聞いたことだという確信を与え、年長者たちには、未来の人々が自分の知っていることを知ることになるという確信を与えます。これによって、集団の精神的な縦軸がまるで姿勢の良い背骨のように真っ直ぐに立ちます。儀式の順序の確実さは、反応を強要することによってではなく、共通知識の生成を助けることによって組織の絆を強めると言えるでしょう。
わたしたちは儀式の力を改めて知った上で、冠婚葬祭業を極めたいものです。
大礼と創立記念祝いたり
儀式なくして日の本はなし 庸軒