2017
11
株式会社サンレー

 代表取締役社長

  佐久間庸和

後期高齢者を光輝好齢者に変える

  コミュニティセンターを作ろう!

●紫雲閣から三礼庵へ
 松柏園ホテル新館「ヴィラルーチェ」がグランド・オープンし、10月25日・26日の両日に「サンレー創立50周年記念祝賀会」がニュー松柏園で盛大に開催されました。
 また先月は、「新宮紫雲閣」「日田紫雲閣田島館」「くさみ三礼庵」という3つの葬祭施設がオープンしました。「紫雲閣」と別ブランドで展開する「三礼庵」は「本当の家族葬」の提供をめざしています。
 「三礼」とは、小笠原流礼法の「慎み」「敬い」「おもてなし」の3つの礼の心を表わします。紫雲閣と三礼庵あわせて、施設数が100を超える日も近いでしょう。
 いま全国には多くのセレモニーホールが存在していますが、『冠婚葬祭の歴史』(水曜社)という本によれば、本格的な大型施設はわが社の「小倉紫雲閣」が第1号だそうです。いわば、サンレーがセレモニーホールの文化を創造したわけですが、さらなるイノベーションとしてのコミュニティセンター作りを進めたいと思います。

●コミュニティセンターの時代
 わが社は「セレモニーホールからコミュニティセンターへ」をスローガンに掲げています。従来の「葬儀をする施設」から「葬儀もする施設」への転換を目指しているのです。
 たとえば、各地の紫雲閣を「子ども110番の家」「赤ちゃんの駅」に登録したり、常備薬やAEDを設置したりしています。さらには、映画、演劇、音楽コンサートなども上演できる地域の文化の殿堂化をめざします。
 サンレー本社のある北九州市は日本一の超高齢都市として知られています。その中には、「八幡紫雲閣」がある八幡東区の大蔵のように坂道が多い街もあります。そこには多くの高齢者が住んでおられ、日々の買い物やゴミ出しにも苦労をしておられます。こういった問題を解決する「買い物支援」「ゴミ出し支援」にも積極的に取り組みます。
 これらの取り組みは、「日本経済新聞」や「日経MJ」などでも紹介され、大きな反響がありました。

●寺院化するセレモニーホール
 北九州市の最大の特徴とは何か。それは高齢者が多いことです。北九州市の高齢者比率は30パーセントに迫る勢いで、全国に20ある政令指定都市の中で最も高い数字です。北九州市はいわば「日本一の高齢化都市」であると言ってよいでしょう。
 そこで、北九州市は高齢者が多いことを「強み」として、日本一、高齢者が安心して楽しく生活できる街づくりを目指すべきです。大事なポイントは「孤独死をしない」ということ。わが社を中心に年間約700回開催されている「隣人祭り」をはじめとした多種多様な「隣人交流イベント」のノウハウを駆使して、孤独死を徹底的に防止するシステムを構築することが必要です。
 セレモニーホールをコミュニティセンターに進化させるというのは、ある意味で「紫雲閣の寺院化」とうことでもあります。
 かつての寺院は、葬儀が行われる舞台でありながらも、近隣住民のコミュニティセンター、カルチャーセンターでもありました。
 仏教伝来以来1500年ものあいだ、日本の寺院は生活文化における3つの機能を持っていました。「学び・癒し・楽しみ」です。

●寺院の3つの機能
  まず、「学び」ですが、日本の教育史上最初に庶民に対して開かれた学校は、空海の創立した綜芸種智院でした。また江戸時代の教育を支えていたのは寺子屋でした。寺は庶民の学びの場だったのです。
 次の「癒し」ですが、日本に仏教が渡来し最初に建立された寺である四天王寺は4つの施設からなっていました。「療薬院」「施薬院」「悲田院」「敬田院」の4つですが、最初の3つは、順に病院、薬局、家のない人々やハンセン病患者の救済施設であり、敬田院のみが儀式や修行を行う機関でした。
 最後の「楽しみ」とは、いわゆる芸術文化のことを指しますが、日本文化ではそもそも芸術、芸能は神仏に奉納する芸であって、それ自体が宗教行為でした。お寺を新築するときの資金集めのための勧進興行などがお堂や境内で大々的に行われました。
 こう考えてみると、「学び・癒し・楽しみ」は仏教寺院がそもそも日本人の生活文化において担っていた機能だったのです。
 しかし、明治に入って、「学び」は学校へ、「癒し」は病院へ、「楽しみ」は劇場や放送へと、行政サービスや商業的サービスへと奪われてしまい、寺に残った機能は葬儀だけになってしまいました。

●「後期高齢」を「光輝好齢」に変えよう!
 「セレモニーホールからコミュニティセンターへ」というスローガンは、ある意味で寺院の本来の機能を蘇えらせる「お寺ルネッサンス」でもあるのです。そこでは、グリーフケアという「癒し」の機能を最重視します。
 思い起こせば、わが社は、2004年に高齢者複合施設「サンレーグランドホテル」を北九州市八幡西区に作りました。セレモニーホールと高齢者用のカルチャーセンターなどが合体した前代未聞の施設として大きな話題になりました。今では、「盆踊り」や「観月会」などの年中行事の舞台でもあります。
 最近、超高齢国ニッポンの未来を悲観的に論じた本がよく売れています。悲観的になるばかりでは未来が暗くなる一方なので、なんとか「明るい超高齢社会」のビジョンを描きたいものです。
 いたずらに悲観的になるよりも、みんなで少しでも楽しい生き方を考え、老いるほど幸福になるという「老福社会」をつくりたいもの。紫雲閣で、三礼庵で、天道館で、隣人館で、そして松柏園ホテルやサンレーグランドホテルで、わたしたちは「後期高齢」を「光輝好齢」に変えるお手伝いに励みましょう!

 人老いて学び癒され楽しみを
     与へられれば光り輝き  庸軒