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一条真也
「はじめての『論語』」

 

 前回、『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』の感想を書いた。中国で生まれ、朝鮮半島を経て日本に伝わった儒教だが、その精神は日本において最も根付いたようだ。
 儒教の開祖である孔子は「人が幸せに生きるためには、どうすればいいか」ということを考えた人で、孔子とその弟子たちの言葉や行動をまとめた本が『論語』である。
 孔子、ブッダ、ソクラテス、イエスの4人は「4大聖人」と呼ばれ、明治時代以降の日本で尊敬された。中でも、孔子とブッダはそれ以前の時代からよく知られ、わたしたち日本人に大きな影響を与えてきた。
 『論語』は、千数百年にわたって、わたしたちの祖先に読みつがれてきた。これほど日本人の「こころ」に大きな影響を与えてきた本はないのではないだろうか。
 特に江戸時代には、あらゆる日本人が『論語』を読んだ。武士だけでなく、町人たちも『論語』を読んだ。そして、子どもたちも、寺子屋において『論語』を素読して学んだ。
 儒教とか『論語』というと、「かた苦しいなあ」と思う人もいるかもしれないが、孔子は大いに人生を楽しんだ人だった。きれいな色の着物を好み、音楽を愛した。『論語』には「楽しからずや」「悦ばしからずや」などの前向きな言葉が非常に多い。
 同じ聖人でも、ブッダやイエスの言葉には人間の苦しみや悲しみについては出てきても、楽しみや喜びなどはまず見当たらない。この点、『論語』に前向きな言葉が多いのは、本当に素晴らしいこと。孔子は、とにかく「どうすれば幸せに生きることができるか」を考え抜いた人であり、『論語』とは究極の幸福論なのだ。
 このたび、わたしは、小中学生向けに『はじめての「論語」』(三冬社)を上梓した。「しあわせに生きる知恵」というサブタイトルで、わたしが『論語』の中から現代の日本の子どもたちに読んでほしい教えを選んで、わかりやすく解説した。
 お子さんやお孫さんに1冊どうぞ!