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一条真也
「永六輔さんの思い出」

 

 永六輔さんが亡くなられた。
 永さんといえば、放送作家として有名だが、作詞家としても売れっ子だった。数多くのヒット曲の中でも、「上を向いて歩こう」は日本の歌謡史上最高の名曲であると確信する。 「SUKIYAKI」とタイトルを変え、アメリカのビルボードで1位の栄冠に輝き、翌年のゴールドディスクも受賞した。
 英語以外の言語で歌われた曲としては史上初だった。1963年のことだから、わたしが生まれた年の出来事である。この快挙が、いかに日本人に勇気と希望を与えたことか!
 戦後の日本人に希望を与え、阪神・淡路大震災のときも東日本大震災のときも被災者の人々に勇気を与えた希代の名曲は、永六輔、中村八大、坂本九という3人の才能の合体によって生まれた。いわゆる「689トリオ」である。ついにトリオは3人とも他界された。あの世で再会を喜び合っているかもしれない。
 永さんといえば、忘れられないのが大ベストセラーの著書『大往生』(岩波新書)である。94年3月に書かれたこの本は、軽やかな言葉で「死」を語り、その年最大のベストセラーとなった。日本人の死生観にも大きな影響を与えた。
 同年9月4日、永さんをわが社のイベントの講師にお招きした。タイトルは「ここは地球の真ん中です」だったが、『大往生』の発売からちょうど半年後の講演ということで、会場の小倉紫雲閣の大ホールは超満員になった。永さんは葬儀にも言及され、記憶に残る素晴らしい葬儀とは、「特定の形式・宗教にとらわれることなく、当人(故人)が生前から親しんできたもの(音楽・文化)を取り入れ、周りの人々も故人を偲ぶに足りる内容ではないか」と述べられた。
 講演後、サンレー本社の貴賓室でご本人とお会いした。少しの時間であったが、「死」と「葬」について意見交換をさせていただいた。とても優しい目をされた方だった。
 心よりご冥福をお祈りしたい。