「隣人祭り」をご存知ですか? 地域の高齢者を中心とした食事会です。
6月は、欧米をはじめとする世界各国で「隣人祭り」が最も多く開催される時期です。日本では6月11日に大規模な「隣人祭り」が北九州市八幡西区にあるサンレーグランドホテルで開催され、わたしも同ホテルを訪れました。午前11時のスタートでしたが、会場には200人以上の人々が集まりました。
「隣人祭り」は、今やヨーロッパを中心に世界30カ国以上、1000万人もの人々が参加するイベントです。その発祥の地はフランスで、パリ17区の助役アタナーズ・ペリファン氏が提唱者です。きっかけはパリのアパートで一人暮らしの女性が孤独死し、1カ月後に発見されたことでした。ペリファン氏が駆けつけると、部屋には老女の変わり果てた姿がありました。同じ階に住む住民に話を聞くと「一度も姿を見かけたことがなかった」と答えました。大きなショックを受けたペリファン氏は「もう少し住民の間に触れ合いがあれば、悲劇は起こらなかったのではないか」と考えました。そして、NPO活動を通じて1999年に「隣人祭り」を呼びかけました。
第1回目の「隣人祭り」は、悲劇の起こったアパートに住む青年が中庭でパーティーを開催し、多くの住民が参加し、語り合いました。最初の年は約1万人がフランス各地の「隣人祭り」に参加しましたが、2003年にはヨーロッパ全域に広がり、08年には約800万人が参加するまでに発展しました。
この年の5月にはついに日本にも上陸。4日間、東京の新宿御苑で開催され、200人以上が集まったそうです。その後、わたしが経営する冠婚葬祭互助会のサンレーでは10月15日に北九州のサンレーグランドホテルで開催された「隣人祭り」のサポートをさせていただきました。同ホテルの恒例行事である「秋の観月会」とタイアップして行われたのですが、これが九州では最初の「隣人祭り」となりました。
日本で最も高齢化が進行し、孤独死も増えている北九州市での「隣人祭り」開催とあって、マスコミの取材もたくさん受け、大きな話題となりました。その後も、わが社はNPO法人ハートウェル21と連動しながら、「隣人祭り」を中心とした隣人交流イベントのお手伝いを各地で行ってきました。今年も750回以上の開催サポートを予定しています。
わたしたちがサポートする「隣人祭り」は日本流のアレンジを加えています。本家のフランスをはじめ、欧米諸国の「隣人祭り」は地域住民がパンやワインなどを持ち寄る食事会ですが、そのままでは日本に定着させるのは難しいと考え、わたしたちは、季節の年中行事などを取り入れています。たとえば、花見を取り入れた「隣人さくら祭り」とか、雛(ひな)祭りを取り入れた「隣人ひな祭り」、節分を取り入れた「隣人節分祭り」、七夕を取り入れた「隣人たなばた祭り」、秋の月見を取り入れた「隣人祭り 秋の観月会」、クリスマスを取り入れた「クリスマス隣人祭り」といった具合です。
「隣人祭り」には、さまざまな楽しい出し物があります。この日も、博多笑い塾による「笑って健康 バラエティショー」が行われ、塾長である小ノ上マン太朗さんがステージで爆笑漫談を披露しました。「博多笑い塾」とは、日本初の「笑い」のNPO法人です。福岡を拠点に、笑いの健康をテーマとして、笑いの医学的効用についての研究や実践を通した活動を行っています。
続いて、「フラダンスステージ」です。複数のチームが、さまざまなカラフルな衣装で優雅に舞ってくれました。舞台狭しと踊る美女たちのパフォーマンスに会場は熱気ムンムン! サンレーグランドホテルがハワイアンセンターに変わったようでした。
そして、「隣人大歌声喫茶」です。松岡くみよさんのリードで、みんなで歌いました。この日は、「上を向いて歩こう」「故郷」「夏の思い出」を歌い、さらに松岡さんのオカリナ演奏に合わせて「ハナミズキ」「見上げてごらん夜の星を」「ふるさとは今もかわらず」を合唱しました。わたしも、大きく口を開けて腹から声を出しました。
それから、のこぎり演奏家の西尾幸助さんが、珍しい西洋のこぎりでの演奏を披露してくれました。最後は、再び松岡さんが登場し、西尾さんの演奏に合わせて参加者全員で「ああ人生に涙あり」を合唱しました。みんなで歌うと、「こころ」がひとつになります。歌が「こころ」をつなぎ、歌が人をつなぐのです。
「隣人祭り」では、「いま」「ここに」居合わせた人が"となりびと"だという実感が強く湧いてきます。「いま」「ここに」居合わせるだけで、大いなる「縁」を感じることができるのです。そして、それこそが「無縁社会」を乗り越える第一歩となるはずです。「隣人祭り」が日本中で開かれれば、一人暮らしの高齢者にも仲間が増え、孤独死は激減することでしょう。