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一条真也
「5月はわたしの特別な月」

 

 5月になった。わたしにとって特別な月である。なぜなら、5日の「こどもの日」、今年は8日となる「母の日」、そして10日のわが「誕生日」があるからである。
 幼いときから、いつもこの3つの「日」は3点セットであった。そして、この3つの日は本質的に同じなのだと少し前に気付いた。それは、自分を産んでくれた母親に感謝する日だということである。
 ヒトの赤ちゃんというのは自然界で最も弱い存在だという。全てを母親がケアしてあげなければ死んでしまう。2年間もの世話を必要とするほどの生命力の弱い生き物は、ヒトの他に見当たらない。
 わたしは「なぜ、こんな弱い生命種が滅亡せずに、残ってきたのだろうか?」と、ずっと不思議に思っていた。あるとき、その謎が解けた。それは、ヒトの母親が子どもを死なせないように必死になって育ててきたからである。
 出産のとき、ほとんどの母親は「自分の命と引きかえにしてでも、この子を無事に産んでやりたい」と思うという。実際、母親の命と引きかえに多くの新しい命が生まれた。また、かつては産後の肥立ちが悪くて命を落とした母親も数えきれない。
 まさに、母親とは命がけで子どもを産み、無条件の愛で育ててくれた人なのである。ちなみに、わたしが生まれた昭和38年の「母の日」は5月12日であった。わたしの母は最初のわが子を産んで、母になった2日後に「母の日」を迎えたわけだ。
 今度の誕生日で、わたしは53歳になる。誕生日を祝うということは、「あなたがこの世に生まれたことは正しいですよ」と、その人の存在を全面的に肯定することである。
 わが社では、毎月の社内報に全社員の誕生日情報(年齢は秘密)を掲載し、「おめでとう」の声をかけ合うように呼びかけている。誕生日当日には、わたしが社員のみなさんにバースデーカードを書き、ささやかなプレゼントを添えてお渡しする。