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一条真也
「長寿祝いは人生の祝勝会」
先日、知り合いの編集者が「還暦」を迎えたので、お祝い会を開いた。まずはホテルのBARで待ち合わせ、シャンパンで乾杯。その後は食事して、スナックでカラオケという、いわゆる「おじさんコース」である。
近年、30歳前後を「アラサ―」、40歳前後は「アラフォー」、50歳前後は「アラフィフ」と呼ぶ。60歳前後は伝説の名俳優・嵐寛十郎を思わせる「アラカン」と言うそうだ。
還暦は第二の誕生とされ、生まれ直すとの意味合いで、赤子のように赤色の衣服や頭巾などを贈って祝う。還暦に贈る赤色は、赤子に贈る赤い品々になぞらえているという。
では、なぜ赤色なのだろうか。
赤色は、朱色や紅色なども含めて祝意を表すもので、縁起物や祝い事の膳椀、酒樽などに使われた。魔除けの意味でも赤色は重視されたようだ。
わたしは、赤のチャンチャンコの代わりに、「還暦祝い」として、その人にラルフ・ローレンの赤いVネックセーターをプレゼントした。
日本には、長寿祝いというものがある。数え年で61歳の「還暦」、70歳の「古稀」、77歳の「喜寿」、80歳の「傘寿」、88歳の「米寿」、90歳の「卒寿」、99歳の「白寿」などだ。
そのいわれは、次の通り。
還暦は、生まれ年と同じ干支の年を迎えることから暦に還るという。古稀は、杜甫(とほ)の詩である「人生七十古来稀也」に由来。喜寿は、喜の草書体が「七十七」であることから。傘寿は、傘の略字が「八十」に通じ、米寿は八十八が「米」の字に通じる。卒寿は、卒の略字の「卆」が九十に通じる。そして白寿は、百から一をとると、字は「白」になり、数は九十九になるというわけである。
沖縄の人々は「生年祝い」としてさらに長寿を盛大に祝う。それらは高齢者が厳しい生物的競争を勝ち抜いてきた人生の勝利者であることを示し、「人は老いるほど豊かになる」ということをくっきりとした形で見せてくれる。長寿祝いとは、大いなる人生の祝勝会なのである。