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一条真也
「除夜の鐘と人生の旅立ち」
今年も残すところ僅かだが、大晦日といえば「除夜の鐘」。その起源は詳しく分かっていないという。
いろいろ調べたところ、「京都新聞」(2006年12月25日付)の記事に、元佛教大学文学部准教授の安達俊英氏の見解として次の記載がある。
「中国の宋に起源があり、鎌倉時代に禅寺に伝わったといわれる。葬式や地蔵盆など、現在のような仏教行事が一般化したのは、室町時代からで『推測だが、室町時代に村の自治意識が高まり、宗教行事も自分たちで行おうとした。除夜の鐘も、そんな意識から室町時代に広がり始め、江戸時代に一般寺院でも行うようになったのだろう』という」。
いずれにしても鐘の音には、日本人の心を癒やす効果があるのだろう。でも、最近は騒音問題で除夜の鐘が敬遠されることもあるそうだ。
一方、葬儀の現場では各地で鐘の音が人気を呼んでいる。2013年10月に北九州市小倉北区にオープンしたセレモニーホール「霧ヶ丘紫雲閣」では、「禮鐘の儀」という新しい儀式が誕生した。出棺の際に霊柩車のクラクションを鳴らさず、鐘の音で故人を送るセレモニーである。
現在、日本全国の葬儀では霊柩車による「野辺送り・出棺」が一般的である。大正時代以降、霊柩車による野辺送りが普及し、現在に至るまで当たり前のように出棺時に霊柩車のクラクションが鳴らされている。
しかし紫雲閣グループでは、昨今の住宅事情や社会的背景を考慮し、出棺時に霊柩車のクラクションを鳴らすのではなく、「礼」の想いを込めた鐘の音による出棺を行っている。
この鐘が鳴るたびに、故人の魂が安らかに旅立たれ、愛する人を亡くした方々の深い悲しみが癒されることを願っている。
わたしは「死」とは「人生を卒業すること」であり、「葬儀」とは「人生の卒業式」であると考えている。そして、セレモニーホールとは人生の港であり、出港にはやはり銅鑼の音こそがふさわしいと思う。