第41回
一条真也
「北九州で生きる」

 

 40回にわたる本連載も、今回でひとまずの区切りとしたい。最後に、北九州市に住む方々に一言。
 北九州市の最大の特徴とは何か。それは、高齢者が多いことだ。現在の高齢者比率は、全国に20ある政令指定都市の中で最も高い数字だとされる。
 日本は世界で最も高齢化が進行している国であり、その中で北九州市は最も高齢化が進行している政令指定都市だ。つまり北九州市は世界一の超高齢化都市であると言っても過言ではない。
 その多くの高齢者が生活する北九州市において「老い」が不幸だとしたらどうなるか。
 北九州市は不幸な人間がもっとも多くいる世界一不幸な街となる。しかし逆に、「老い」が幸福だとしたら、世界一幸福な街になるのである。
 世界一幸福な街と世界一不幸な街。まさに、天国か地獄か、だ。
 ならば、わたしたちは天国を選ぶしか道はないではないか。
 わたしは、北九州ほど日本人の豊かさに貢献してきた地域はないと思う。筑豊では、危険な炭鉱に潜り石炭を掘って貢献した。八幡では、熱い製鉄所で鉄を作って日本中を豊かにしてきた。
 そして今度は、高齢者の多さを「強み」とすることで、もう一度、日本人を豊かにするチャンスが北九州市にはあるのではないか。
 わたしは「人は老いるほど豊かになる」と信じている。そして、ぜひ北九州の高齢者の方々にそれを実現していただきたい。
 わが社は、「人間尊重」をミッションとして、冠婚葬祭・ホテル・介護事業や「隣人祭り」などの社会貢献活動に取り組んできた。
 北九州市には、社会に貢献している企業がたくさんある。
 また、高齢者や被災者の方々を支える「思いやり」のある人々がたくさんおられる。北九州市は、きっと日本一の「思いやり都市」になれると思う。
 泣いても笑っても、人生は1回きりである。後戻りはできない。その人生を福岡で過ごす人もいれば、大阪や東京で過ごす人もいる。また、ロンドンやパリやニューヨークや上海やソウルで過ごす人もいるだろう。
 しかし、わたしたちは北九州で暮らしている。北九州で生きている。この街で生まれ、結婚し、子どもを産み、育て、それから老い、そして人生を卒業していくのである。
 その人生を卒業するときに、「ああ、この街で生きることができて良かった」と言いたいものだ。そのためにも、北九州を世界一の「老福都市」にしたい。北九州は人類の未来を担っているのである。