2015
07
株式会社サンレー

 代表取締役社長

  佐久間庸和

「サンレー流コンパで

 心を開いて語り合おう!」

●稲盛流コンパ

 『稲盛流コンパ』北方雅人・久保俊介著(日経BP社)という本があります。「最強組織をつくる究極の飲み会」というサブタイトルがついており、現在、異色のビジネス書として話題になっています。じつは、この本、佐久間進会長が一読して感じるところ大だったそうで大量購入し、わが社のサンレーの管理職のみなさんに配っています。
 同書の帯には、ほろ酔い加減で頬を赤らめた稲盛和夫氏の顔写真とともに、「酒を酌み交わすのです。心をさらけ出すのです。」「京セラ躍進、JAL復活を支えたコンパ経営」と書かれています。またカバーには、以下のような内容紹介があります。
「あなたは稲盛流コンパを知っているか。稲盛和夫氏が約50年前に編み出した独自の飲み会は、従業員の考え方、組織のあり方を大きく変貌させる。なぜ、部下と心から分かり合えないのか。なぜ、組織がこんなにもまとまらないのか。若き稲盛氏は煩悶し、そしてコンパを生み出した。これまで解明されずにいた稲盛経営の深部にもぐる」

●サンレー流コンパ

 「稲盛流コンパ」の存在は、わたしも数々の稲盛氏の著書を読んで知っていました。
 もともとわが社も懇親会の多い会社であり、経営者と社員がお互いに胸襟を開く飲み会のパワーはよく理解していました。
 佐久間会長も「この本を読んで、まるでサンレーのことを書いているのではないかと錯覚しました。特に、創業時のわが社は京セラのようなコンパをよく開いて、みんなで『どうすれば、満足のゆく仕事ができるか』『どうすれば、この会社が良くなるか』などを語り合っていました」と言われています。
 しかし、同書を読んで、わたしは初めて「稲盛流コンパ」の全貌を知りました。「はじめに」に次のように書かれています。
「『稲盛流コンパ』を実践すると、赤の他人であるはずの従業員たちが、火の玉のごとく一致団結します。コンパを重ねた企業の多くが、業績を大きく伸ばしています。コンパは、ただの飲み会とは一線を画す、巨大なエネルギーが生まれ出る源だったのです」

●「理念」と「コンパ」は不即不離

 「はじめに」の最後には、以下のように書かれています。
「ある経営が成功するかどうかは、目に見えない人間精神の部分で決まるのです。そしてこの領域には、昨今注目されている『理念経営』という高尚な領域もあれば、『コンパ経営』という人間くさい領域もあるのです。この視点は極めて大切です」
 この一文は、わたしの心に違和感なく入ってきました。「理念」と「コンパ」は同じ目的を持った営みであるというよりも、この2つは不即不離の関係にあるように思います。稲盛和夫氏自身は、コンパについて以下のように語っておられます。
「コンパとは、私が従業員との間で率直にコミュニケーションを図る場であり、同時に、私の考えをみんなに理解してもらうための大切な場です。(中略)私は会社を創業して以来、機会を見つけてはコンパを開き、リラックスした雰囲気の中、膝を突き合わせて酒を酌み交わし、人生について、仕事について語り明かしました」

●「和やかな」ムードが大切

 この稲盛氏の言葉を受けて、『稲盛流コンパ』には「飲み会は飲み会でも、大真面目な飲み会。多少羽目を外すことはあっても、上司や会社の陰口をたたく憂さ晴らしの場ではない。経営者と従業員、上司と部下、同僚同士が互いに胸襟を開き、仕事の悩みや働き方、生き方を本音で語り合う。酒を通して一人ひとりが人間的に成長し、組織を強固な一枚岩にするのが『稲盛流コンパ』だ」とあります。
 『稲盛流コンパ』を読んで改めて感じたのは、「平成の経営の神様」と呼ばれる稲盛氏の人間臭さです。
 稲盛氏は、コンパでは自分の考えに納得しない社員を相手に納得させるまで説き伏せ、場の空気を和ませるためには、顔に化粧をして女装したりもするそうです。当然ながら、コンパ会場は爆笑の渦となり、空気が大いに和みます。
 わたしも、職場には何よりも「和」が必要であり、「和やかな」ムードが大事だと思っています。そのためには、社長自らピエロになることなど、まったくヘッチャラです。

 ●職場でコンパを開こう!

 というか、わたしはこの部分がちょっと過剰なところがあり、一部の社員には「うちの社長って、変な人では?」と誤解されている節もありますが・・・(苦笑)
 それはともかく、コンパには「マネジメント」の真髄があります。「マネジメント」という考え方は、世界最高の経営学者であるピーター・ドラッカーが発明したものとされています。ドラッカーといえば、世界中の経営者にもっとも大きな影響力を持つ「経営通」ですが、彼が発明したマネジメントとは何でしょうか。
 ドラッカーの大著『マネジメント』によれば、まず、マネジメントとは、人に関わるものです。その機能は、人が共同して成果をあげることを可能とし、強みを発揮させ、弱みを無意味なものにすることです。
 マネジメントとは一般に誤解されているような単なる管理手法などではありません。それは、徹底的に人間に関わってゆく人間臭い営みなのです。
 すべての組織は、結局、人間の集まりにほかなりません。 そこで働く人々の「こころ」を一つにすることが何よりも大切です。 みなさんの職場でも、ぜひサンレー流コンパを開き、心を開いて語り合って下さい。


 車座で心開いて酒を飲む
        縁で集いし同志とともに     庸軒