第27回
一条真也
「知行合一」王陽明

 

 言葉は、人生をも変えうる力を持っています。今回は、かの吉田松陰や西郷隆盛などにも強い影響を与えた、陽明学の創始者である王陽明の言葉です。
 陽明学は「心学」とも呼ばれます。王陽明は、本当に知るということは創造することであるとして、「知は行の始めなり。行は知の始めなり」と説きました。
 「知」というものは行いの始めであり、「行」というものは「知」の完成である。これが、1つの大きな循環関係をなすというのです。そして、陽明は有名な「知行合一」を唱えました。
 未来に向かっての行動の決定に対しては、人間が学としてとらえられる、言語化された知だけでは不十分です。
 禅で教える「不立文字」のごとく、個々の専門家がスペシャリストとしての経験を活かして、人間の能力全体としてとらえた言語化されない知、つまり「暗黙知」を加え、知行合一として奥行きを究めることが重要であると言えるでしょう。
 行動が感情を生む、これが仕事や人生で成功する秘訣です。なぜならば、人生についての探究心は、本質的に感情に支配されているからです。