第25回
一条真也
「歳寒くして、然る後に松柏の彫むに後るることを知る」孔子
言葉は、人生をも変えうる力を持っています。今回は、儒教を開いた孔子の言葉です。わたしは、世界孔子協会より「孔子文化賞」を与えられましたが、人類史上で孔子を最も尊敬しており、その言行録である『論語』を心の支えとしています。
さて、わたしはホテルを経営しています。「松柏園ホテル」というのですが、これは祖父が『論語』にちなんで名づけました。
『論語』には、以下の言葉が登場します。「歳寒くして、然(しか)る後に松柏の彫(しぼ)むに後(おく)るることを知る」〈子罕篇〉
「冬になってはじめて松や柏が枯れないで残ることがわかるように、人の真価はピンチのときにこそ、はっきりと現れる」という意味です。その人の能力が表面的なものなのか、しっかり身についているものなのかは、緊急時にわかるものです。
ふだんから周囲の人たちに親切にしていたり、みんなから尊敬されているような人なら、本当に困ったとき、誰かが助けてくれます。でも、いつも自分のことばかり考えている人間は、絶体絶命のピンチのとき、誰も手を貸してくれません。人は自己中心的なことばかりしてはならないのです。
これは、わが祖父の教えでもありました。