代表取締役社長
佐久間庸和
『永遠の知的生活』とは何か?」
●現代の賢者と対談
みなさんは、「読書の秋」にたくさん本を読みましたか? このたび、上智大学名誉教授である渡部昇一先生との対談本『永遠の知的生活』((実業之日本社)が上梓されました。
渡部先生は「稀代の碩学」であり「知の巨人」、そして「現代の賢者」として知られます。
2014年の七夕は、わたしにとって忘れられない日となりました。かねてより心から尊敬している渡部先生のご自宅を訪問し、謦咳に接する機会を得たからです。
わたしの中学時代の同級生に、東北大学大学院の江藤裕之教授がいます。彼は上智大学で渡部先生の下で学んだ愛弟子でもあります。その江藤教授と東京の最寄駅で待ち合わせし、そこから渡部先生の御自宅へ向かいました。
以前、渡部先生とは一度お会いしたことがあります。わたしが理事を務める全互協の講演にお招きしたのですが、そのとき控室でお話しさせていただきました。渡部先生は、わたしのことをよく憶えておられました。もっとも、わたしは何通も渡部先生にお手紙を差し上げていましたが。
●『知的生活の方法』の衝撃
わたしは渡部先生の著書はほとんど読んでいるつもりですが、最初に読んだ本は大ベストセラー『知的生活の方法』(講談社現代新書)でした。この本を中学1年のときに読み、非常にショックを受けました。
このときから、読書を中心とした知的生活を送ることこそが理想の人生になり、生涯を通じて少しでも多くの本を読み、できればいくつかの著書を上梓したいと強く願いうようになりました。
わたしの書斎にある『知的生活の方法』は、もう何十回も読んだためにボロボロになっています。表紙も破れたので、セロテープで補修しています。この本は、わたしのバイブルです。
「世界一」とされ渡部先生の書斎に続いて、書庫を拝見しました。まさに、わたしにとっては夢のような時間でした。
●賢者と何を語ったか
対談の最初は、わたしにとっての「恩書」である渡部先生の大ベストセラー&ロングセラー『知的生活の方法』の思い出から始まって、先生の世界一の書斎および書庫のお話、それから「四大聖人」「心学」「カミ文明圏」といった日本人の本質に迫るテーマを語り合い、最後は靖国神社を中心とした「鎮魂」「慰霊」の問題について意見交換をさせていただきました。
その日は、いろいろな話をさせていただきましたが、わたしは「心学」について質問させていただきました。神道・仏教・儒教が日本人の「こころ」を支えており、それらが共生した「かたち」が冠婚葬祭ではないかという持論を述べさせていただいたところ、渡部先生は「そうですね、日本は"カミ文明圏"なんですよ」と言われました。
「ゴッド」ではなく「カミ」。渡部先生いわく、カミ文明圏の中に神道も仏教も儒教も取り込まれてきたといいます。
●死ぬまで学び続ける
対談は5時間以上にも及びましたが、最後にわたしは書名にもなっている「永遠の知的生活」について語りました。
わたしは「結局、人間は何のために、読書をしたり、知的生活を送ろうとするのだろうか?」と考えることがあります。
その問いに対する答えはこうです。わたしは、教養こそは、あの世にも持っていける真の富だと確信しています。
死が近くても、教養を身につけるための勉強が必要なのではないでしょうか。モノをじっくり考えるためには、知識とボキャブラーが求められます。知識や言葉がないと考えは組み立てられません。
死んだら、人は精神だけの存在になります。
そのとき、生前に学んだ知識が生きてくるのです。そのためにも、人は死ぬまで学び続けなければなりません。
わたしがそのような考えを述べたところ、渡部先生は「それは、キリスト教の考え方にも通じますね」と言って下さいました。
●安心立命を得る
わたしは、読書した本から得た知識や感動は、死後も存続すると本気で思っています。
人類の歴史の中で、ゲーテほど多くのことについて語り、またそれが後世に残されている人間はいないとされているそうですが、彼は年をとるとともに「死」や「死後の世界」を意識し、霊魂不滅の考えを語るようになりました。
渡部先生は「キリスト教の研究家にこんなことを教えてもらいました。人間が復活するときは、最高の知性と最高の肉体をもって生まれ変わるということです」と言われました。
わたしが「これらかもずっと読書を続けていけば、亡くなる寸前の知性が最高ということですね。そして、その最高の知性で生まれ変われるということですね」と言ったところ、先生は「そうです。それに25歳の肉体をもって生まれ変われますよ」と言われました。
これほど嬉しい言葉はありません。わたしは「それを信じてがんばります。まさに『安心立命』であります」と述べました。
わたしは、ゲーテと同じく理想の知的生活を実現された、おそらく唯一の日本人であろう渡部昇一先生に対して、『ゲーテの対話』の著者エッカーマンのような心境でお話しを伺わせていただきました。
渡部先生は現在84歳ですが、95歳まで読書を続け、学び続けると宣言されていました。渡部先生ほどの現代日本最高の賢者でも学ぶことをやめない。そのことに、わたしは非常に感動しました。みなさんも、ぜひ学ぶことを心がけ、自分を高められて下さい。
人生というものは、死ぬまで勉強です!
賢人と語り合ふ夢かなふとき
死ぬまで学ぶことを学べり 庸軒