先月、ミャンマーに行ってきた。「アジア冠婚葬祭業国際交流研究会」のミッションに加わったのである。
滞在最終日、わたしたち一行は「FFSS(フリー・フューネラル・サービス・ソサエティ)」というNPO団体を訪問した。
この団体は、今は亡きミャンマー映画界を代表する監督であるウーツーカー氏が創設。現在は、1959年生まれのチョートゥー氏が代表を務めている。
チョートゥー氏はもともと俳優であり、ミャンマー映画界の最大のスターの1人だったという。この団体、日本で例えるなら黒澤明が創設して、役所広司が代表を務めているといったイメージか。
チョートゥー氏は、ミャンマーにおける超有名人である。そして、その知名度を武器に、2000年代からは貧困を助ける活動をずっと続けている。
災害支援、環境、医療、教育・・・その活動は多岐にわたるが、最も代表的な活動が貧しい人々への葬儀サービスの無料提供だ。現在も1日40件以上の葬儀を奉仕しているという。
チョートゥー代表には、「アウンサンスーチー女史に続き、ミャンマー人として2人目のノーベル平和賞受賞者になるのではないか」という声が多い。
FFSSは、葬儀サービスに続いて、無料クリニック、無料学校、無料図書館なども開設している。
FFSSの本部を訪れて、非常に驚いた出来事があった。スタッフから「日本から来た黄金色をした霊柩車が大活躍しています」と言われ、黄金霊柩車を見に行ったときだ。
その車には、なんと「紫雲閣」のプレートが残されていた。ミャンマーにはバスをはじめとして日本の中古車がたくさん走っているが、それらの車には「○○交通」などのプレートがそのまま残されている。そして、わが社がかつて使用していた車が、このミャンマーのNPO団体で活躍していたのである。
有名なシュエダゴン・パゴダの「黄金の洪水」を見てもわかるように、ミャンマー人は何よりも黄金色を好む。なぜなら、それは仏教における天上界の色だからである。
そして、はるばる日本の「紫雲閣」から海を越えて来た霊柩車も光輝く黄金色であった。
スタッフによれば、「この車、パゴダと同じ黄金だということで、大変な人気です。ミャンマーの人々は、この車で送られれば幸せな来世が迎えられると信じています」と言われたという。それを聞いたとき、涙が出るほど感動した。
わたしは、わが社と「世界平和パゴダ」との不思議な縁の謎が解けたように思った。