第9回
一条真也
「海洋葬のこころみ」

 

 先日、沖縄本島での海洋葬に立ち会いました。

 海洋葬とは、自分や遺族の意志で、火葬した後の遺灰を外洋にまく、いわゆる「散骨」の1つです。
 サンレー主催による「海洋散骨」が那覇の海で行われましたが、まずは現地のメモリアルホール紫雲閣において、合同慰霊祭を開催。献灯式などが行われ、わたしも主催者を代表して献灯させていただきました。

 終了後、それぞれの遺族ごとに集合写真を撮影し、紫雲閣から三重城港へ移動しました。
 船が出港する際は汽笛が鳴らされ、スタッフが整列して見送ります。船は最初の10分ぐらいはけっこう揺れましたね。 

 でも、前日までは悪天候で波も荒かったようですが、当日は晴天で波も穏やかでした。出港から30分ほどして、船は散骨地点に到着しました。 

 そこから、海洋葬のスタートです。

 開式すると、船は左旋回しました。これは、時計の針を戻すという意味で、故人を偲ぶセレモニーです。それから黙祷をし、感謝・祈り・癒しの願いを込めた「禮鐘の儀」を行いました。

 その後、日本酒を海に流す「献酒の儀」が行われ、いよいよ「散骨の儀」です。ご遺族全員で遺骨を海に流し、青と白のコントラストがきれいでした。

 続いて「献花の儀」です。これも、ご遺族全員で色とりどりの花を海に投げ入れました。ご遺族が花を投げ入れられた後、主催者を代表してわたしが生花リースを投げ入れました。カラフルな生花が海に漂う様子は大変美しかったです。

 それから、主催者挨拶として、わたしがマイクを握りました。わたしは、「今日は素晴らしいお天気で本当に良かったです。今日のセレモニーに参加させていただき、海は世界中つながっているのだなと思いました。今日の故人様はいずれも北九州の方だったそうですが、北九州なら関門海峡でも玄界灘でも、海はどこでもつながっています。どの海を眺めても、懐かしい故人様の顔が浮かんでくるはずです」

 それを聞かれたご遺族の方々は、涙を流されていました。涙は世界で一番小さな海です。沖縄の大きな海と、涙という小さな海。ふたつの美しい海が見事にシンクロしました。

 その後、散骨場を去る際、右旋回で永遠の別れを惜しみました。帰るとき、パラグライダーやホエール・ウォッチングの船を見かけました。わたしは「やはり、ここは沖縄の海なのだ」と実感しました。