NHKスペシャルの番組内容を書籍化した一冊で、サブタイトルは「他人事ではない"老後の現実"」です。
いま、高齢者が体調を崩して自宅にいられなくなっても、病院や介護施設は満床で入れません。短期間だけ入れる施設を転々としているうちに、貯金は底をつきます。
そして、行きつく先は生活保護。それでも安住の地は簡単には見つからないという厳しい現実があります。
全篇悲惨な内容が多いですが、最終章の「"老人漂流"を食い止めるために」では、少しだけ希望の光が見えました。
茨城県つくば市にある「ぽらりす」という共同住宅を経営する岡田美智子さんという方の存在です。岡田さんは「お年寄りが集まって、最期まで一緒に過ごす場所」として「ぽらりす」を経営し、費用は食費込みで月13万5000円、入居金などは必要なし。現在の入居者は6人で、いつも満室の状態だそうです。
老人漂流社会を乗り越えるのは、真の意味での「住」のインフラ整備が必要です。わたしが経営する会社は、「住のインフラ企業」をめざしています。
現在の日本で求められている「住」には2つの種類があります。すなわち、「終の棲み処」と「永遠の棲み処」です。
「終の棲み処」は、一昨年福岡県飯塚市にオープンした「隣人館」で、月額基本料金は食費込みで7万8000円です。同施設は、究極の地域密着型小規模ローコストによる高齢者専用賃貸住宅なのです。
「永遠の棲み処」は、今年の秋から福岡県田川郡に5万円から永代供養が可能な樹木葬霊園「鎮魂の森」を作ります。
本書には亡き妻の遺骨とともに"漂流"する老人が登場しますが、「鎮魂の森」が完成すれば、どなたでも安らかに眠っていただけます。
また、食事の調理が困難な、1人暮らし、あるいは夫婦のみの高齢者世帯などへの「宅配サービス事業」へ今年の夏から参入します。本書には足腰の弱った1人暮らしの老人が、蕎麦屋から毎日「もりそば」を出前で頼み、たまに「カツ丼」を頼むということが紹介されており、読んでいて胸が痛みました。
本書は、わたしに多くの具体的ミッションを与えてくれました。「老人漂流社会」はけっして他人事ではありません。わたしたちの親の問題であり、わたしたち自身の問題です。「老人漂流社会」の超克について、さまざまな具体的で現実的なプランをもって挑んでいく覚悟です。
そして、それでも、わたしは「人は老いるほど豊かになる」と信じています。