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一条真也
「おもてなしと日本人〜こころのジパングを目指す」
こんにちは、一条真也です。
2020年の夏季オリンピックの開催地が東京に決定しました。
さまざまな人が東京招致をプレゼンテーションしましたが、その中でも、やはり滝川クリステルさんのプレゼンが最高でしたね。アルゼンチン・ブエノスアイレスのIOC(国際オリンピック委員会)総会で東京がプレゼンテーションを行った際、滝川クリステルさんがIOC委員に東京招致を訴えました。
流暢なフランス語と、ナチュラルな笑顔・・・これ以上ない適役でした。その癒しビームには、すべての男性委員がメロメロになったことでしょう。とにかく、彼女は美しくて可愛くて上品で、おまけにクールビューティでした。
滝川クリステルさんは、プレゼンで以下のように述べました。
「皆様を私どもでしかできないお迎え方をいたします。
それは日本語ではたった一言で表現できます。
おもてなし。それは訪れる人を心から慈しみ、お迎えするという深い意味があります。先祖代々受け継がれてまいりました。以来、現代日本の先端文化にもしっかりと根付いているのです。その『おもてなし』の心があるからこそ、日本人がこれほどまでに互いを思いやり、客人に心配りをするのです」
さらに、彼女は次のような具体例を挙げました。
「皆様が何か落し物をしても、きっとそれは戻ってきます。
お金の入ったお財布でも、昨年1年間だけでも3000万ドル以上も現金が落し物として警察に届けられました。世界各国の旅行者7万5000人への最新のアンケートでも、東京は世界一安全な街とされました。他にも言われることは、公共交通機関も世界一しっかりしていて、街中が清潔で、タクシーの運転手さんも世界一親切だということです。その生活の質の高さはどこででも感じていただけます。また、最高の文化にも浸っていただけます。
世界最高峰のレストラン、ミシュランガイドでは星の数が多い東京。
それらすべてが未来を感じられる街を彩っています。
訪れたすべての方に、生涯忘れ得ない思い出を残すことでしょう」
うーん、どこから見ても完璧なプレゼンではありませんか!
何よりも、「おもてなし」を打ち出したところが素晴らしかったです。
サービスともホスピタリティとも違った、日本独特の「おもてなし」。
彼女が「お・も・て・な・し」と1字づつ印を切るように発声してから、最後に合掌しながら「おもてなし」と言い直した場面には感動しました。
彼女が合掌している姿に、IOC委員たちは「理想の日本人」を見たのではないでしょうか。
東京の治安が良いこととか、公共交通機関が充実しているとか、街が清潔であるとか、そういった現実的な問題ももちろん大事です。でも、「おもてなし」という言葉、そして合掌する姿が日本をこれ以上ないほど輝かせてくれました。
かつての日本は、黄金の国として「ジパング」と称されました。
これからは、おもてなしの心で「こころのジパング」を目指したいですね。
わたしは、クリステルさんのことをこれまで1人の女子アナとしてしか見ていませんでしたが、見方が変わりました。彼女こそは、「おもてなしの女神」です。いま、彼女の元には仕事が殺到し、「おもてなし」は今年の流行語大賞になるのではないかなどと言われているそうです。
ところで、わたしは2000人以上の人々の前で「おもてなし」のプレゼンを行ったことがあります。2011年11月24日に開催された全国商工会議所の「観光振興大会in関門」で「新しい時代の観光」と題するパネルディスカッションが行われ、田中亮一郎氏(北九州商工会議所副会頭・第一交通産業社長)らとともに小生もパネリストになったのです。
滝川クリステルさんは東京の「おもてなし」力を華麗にアピールされましたが、当時のわたしは北九州の「おもてなし」力を愚直にアピールしたのでした。
その後、わたしは下関商工会議所などで「おもてなしセミナー」を開催しました。
「おもてなし」という言葉には2つの意味があるとされています。
基本的には茶事や懐石料理における「おもてなし」ですが、次の2つです。
1.モノを持って成し遂げる → お客様を待遇すること
2.表裏なし → 表裏のないココロでお客様をお迎えすること
この場合のモノとは、季節感のある生花、お客様に合わせた掛け軸、絵、茶器などです。ココロとは、言葉や表情や仕草に表れます。つまりは、「おもてなし」とは、相手を思いやり、相手を喜ばそうという気持ちの表現であり、まさに「ハートフル」に通じるのです。
また、「おもてなし」には三位一体としての「もてなし」「しつらい」「ふるまい」があります。
「もてなし」とは、わざわざ足を運んでいただいたお客様に、できるだけ満足して帰っていただくための迎える側の心構えです。「しつらい」とは。季節や趣向に合わせて、部屋を調度や花などの飾り付けで整えることで、「室礼」とも書きます。「ふるまい」とは、TPOや趣向にふさわしい身のこなしをすることです。
もともと「おもてなし」の心は、言葉を交さなくても相手の気持ちを察することにあり、そのルーツは神道の「神祭」にあるとされています。
山村明義著『本当はすごい神道』(宝島新書)には、次のように書かれています。
「『神祭』は、自然の厳かな雰囲気など目に見えない貴いとされる神々、あるいは太古の昔から人々に畏れられた自然の脅威や、その自然からの恵みを大切に敬う精神性に基づいています。そもそもは、その人がもっとも大切だと思うものに何かを差し上げることが『まつり』の意味のひとつなのです。その場合には、神聖な場所において魂と心を込めて作った食べ物や、『幣帛(へいはく)』という絹布などを神様に差し上げるための『神祭』が執り行われます。これが日本人の『おもてなし』の原型にあるのです」 2020年、オリンピックという「地球まつり」において、日本人がそのような「おもてなし」を世界に示すのか。それを考えると、今からワクワクします。
2013.10.1