第12回
佐久間庸和
「隣人祭りのある街」

 

 現在の日本社会は「無縁社会」などと呼ばれている。それを乗り越え、わたしたちが「有縁社会」を再生する最良の方策の一つは、「隣人祭り」であると思う。
 隣人祭りとは、地域の隣人たちが食べ物や飲み物を持ち寄って集い、食事をしながら語り合うことである。
 都会に暮らす隣人たちが年に数回、顔を合わせる。同じアパートやマンションをはじめ、同じ地域の隣人たちなど、ふだんあまり接点のない地域の人たちが、気軽に交流できる場をつくり、知り合うきっかけをつくる。
 また、自治会や地元の行事、集合住宅の会合などに、今まで参加しなかった人を集めたいときにも有効。サークル活動やボランティア活動に、同じ地域に暮らす隣人に参加してほしいとき、高齢者や子どもたち、単身者などを含め交流の場をつくるのにも最適だ。
 隣人祭りは、今やヨーロッパを中心に世界の30カ国以上、1000万人もの人々が参加するという。発祥の地はフランスで、パリ17区の助役アタナーズ・ペリファン氏が提唱者である。
 きっかけは、パリのアパートで一人暮らしの女性が孤独死し、1ヵ月後に発見されたことだった。ペリファン氏が駆けつけると、部屋には死後1ヵ月の臭気が満ち、老女の変わり果てた姿があった。
 同じ階に住む住民に話を聞くと、「一度も姿を見かけたことがなかった」と答えた。 大きなショックを受けたペリファン氏は「もう少し住民の間に触れ合いがあれば、悲劇は起こらなかったのではないか」と考えた。そして、NPO活動を通じて1999年に「隣人祭り」を人々に呼びかけたのである。
 第1回の隣人祭りは、悲劇の起こったアパートに住む青年が中庭でパーティーを開催したという。多くの住民が参加し、語り合った。そのとき初めて知り合い自己紹介をした男女が、その後、結婚するという素敵なエピソードも生まれている。
 隣人祭りが発展した背景には、孤独死の問題はもちろん、多くの人々が行きすぎた個人主義に危機感を抱いていることがある。
 2008年10月、わが社は隣人祭りを北九州市で開催するお手伝をさせていただいた。その後、年々開催回数を増やしてきた。   13年は、合計で約550回の隣人祭りを中心にした隣人交流イベントが開催される予定だ。今や、北九州市は世界に誇る「隣人都市」なのである。
 あなたも、ぜひ隣人祭りに参加してみませんか。さらには、自分でオリジナルの隣人祭りを開いてみませんか。