第66回
一条真也
『ミャンマーで尼になりました』
天野和公著(イースト・プレス)
本書は、ミャンマーで実際に仏教修行した女性による4コマ漫画です。
カバーにはミャンマー式寺院であるパゴダを背景にしてニッコリと微笑む著者のイラストが描かれています。
帯には「仏教に恋をして、女ひとりでミャンマーへ!」というキャッチコピーに続いて、「そこで手に入れたのはブッダが教えてくれた『幸せに生きる』ためのヒント。心が洗われる尼さん修行コミックエッセイ」と書かれています。
著者は青森県十和田市生まれ、東北大文学部(宗教学)卒。仙台市内の葬儀社で勤務したこともあるそうですが、現在は宗教法人「みんなの寺」の坊守(自称・寺嫁)をされています。
「みんなの寺」は浄土真宗の単立寺院で、住職は著者の夫である天野雅亮さん。天野夫妻ともに実家はお寺ではないにもかかわらず、檀家、コネ、スポンサー、土地建物など、すべてありませんでした。それでも、四苦八苦の末に寺院を立ち上げられたのです。その情熱と行動力には感服します。
ご主人から著者へのプロポーズの言葉は、「一緒に、お寺をつくらない?」だったそうです。
結婚後、著者はミャンマーへ単身修行に出かけました。
ミャンマーといえば、国民の90%が仏教徒の国です。著者は、そこで生涯の師と出会い、「ありのままを受け入れる」ことの大切さを知ります。そして、ブッダが教えてくれた「幸せに生きる」ためのヒントに想いを馳せます。
「あとがき」で、著者は「ブッダは『生きる苦しみ』を正しく見つめ、それを乗り越える道を示された方です」と書いています。だからこそブッダの教えはいつだって、わたしたちにこう語りかけるといいます。「『いま・ここ・私』を抜きにして、学びも修行もないんだよ」、そして「そのままの自分を見て、まるごと抱えて、そこからしか進めないんだよ」と。
著者はそれまで漫画などまともに描いたことがなかったそうですが、ほのぼのとした絵柄から、ミャンマー仏教の姿が親しみをもって伝ってきます。
また、修行がなかなか思うように進まないのですが、その悩む気持ちがよく描けており、共感できました。女性ならば、もっと共感できるのではないでしょうか。
9月21日(土)、「ミャンマーと日本をつなぐ」と題して、門司にある「世界平和パゴダ」のシンポジウムが開催されます。そこで、わたしは著者と共演させていただくことになりました。お会いして、ミャンマー仏教のお話を直接お伺いする日を今から楽しみにしています。