第10回
佐久間庸和
「映画都市の楽しみ」

 

 いまや、北九州市は日本を代表する映画都市である。同市を含む福岡県は人口100万人当たりの映画館数が全国1位だとか。  総務省統計局による社会生活統計指標(2009年度)では、人口100万人当たりの常設映画館数は、1位の福岡県が36.4館、2位の熊本県が32.0館、3位の東京都が24.1館、4位の広島県が24・1館で並んでいる。
 単純に映画館の数だけをカウントすれば東京が全国1位である。しかし、近年はスクリーンが複数あるシネコンが増えており、一概に映画館の数だけでは実態を把握できない。
 北九州市における映画館数は5館で、スクリーン数は38となっている。内訳は「シネプレックス小倉」と「小倉コロナシネマワールド」が10、「Tジョイリバーウォーク北九州」と「ワーナー・マイカル・シネマズ戸畑」が8、そして「小倉昭和館」が2スクリーンである。
 小倉昭和館以外はすべてシネコンだが、その中でもシネプレックス小倉を愛用している。なにしろ、自宅から車で5分、会社からだと3分の距離にあるので、便利なことこの上ない。最新の話題作を観るとき、東京の映画館では窮屈な思いをしなければならないが、小倉ではそんな心配は無用。さらに朝は「午前十時の映画祭」として、往年の名画を楽しむことができる。
 名画といえば、小倉には究極の名画座がある。創業74周年の「小倉昭和館」だ。原田マハの名作『キネマの神様』に登場するような映画館で、かの松本清張も通ったという。
 最近ここで、私は「屋根裏部屋のマリアたち」と「The Lady~引き裂かれた愛」を2本立てで見た。
 北九州市は映画の鑑賞環境が優れているだけではない。フィルムコミッションの活躍で、多くの日本映画の撮影ロケ地となっている。最近では「図書館戦争」が北九州市立中央図書館と北九州市立美術館などで撮影された。
 他にも、高倉健主演の「あなたへ」、「終の信託」、「ロボジー」、「Kー20怪人二十面相・伝」、そして旦過市場で撮影された「初恋」など、北九州から生まれた映画を数えあげればキリがない。
 映画とは非日常の世界を創造する「夢」のシンボルである。その多くの「夢」が北九州で紡がれているとは、なんと素敵なことか。
 今後も、様々な名作が北九州から誕生していくことだろう。そして、私は北九州の映画館に通うことだろう。ご近所感覚の映画館で日常の憂さを忘れ、ひとときの「夢」の世界に浸ることを無上の楽しみにしている。