第4回
佐久間庸和
「助け合い日本一の街に」

 

 昨年末、あわただしい師走のある日、わたしは八幡東区荒生田にある東八幡キリスト教会を訪問した。ホームレスの方々の「人間の尊厳」を守る寄付金をお届けすることが目的である。
 贈呈式の最後に、NPO法人・北九州ホームレス支援機構の奥田知志理事長から丁重な感謝状を頂戴した。「歳末助け合い運動」ではないが、これが終わらないと年が越せない気分だ。
 牧師でもある奥田理事長はわたしと同年齢だが、イエスの説く「隣人愛」の精神を実践されている方である。つねに困窮者に寄り添い、奉仕に人生を捧げる姿には、心からの敬意をおぼえる。
 わたしが訪れたとき、教会ではホームレスから自立された方々の誕生会が開かれていた。誕生日を祝うとは、「あなたがこの世に生まれたことは正しいですよ」ということ。いわば、その人の存在を全面的に肯定することだ。まさに、わが社のミッションである「人間尊重」そのものだ。わたしも、全社員に直筆のバースデーカードを贈っている。
 北九州ホームレス支援機構の活動は、全国的に注目され、メディアにもよく紹介される。そのせいもあって、北九州市は「日本で最もホームレスの人々や生活保護受給者の支援が盛んな街」と呼ばれるようになった。
 同機構が中心となり、「絆プロジェクト北九州」という試みも実施された。住まいの提供から生活相談、就業支援まで官民協働のネットワークで大震災の被災者を支えることを目指す。また、39歳以下の生活保護受給者を、地域や行政、企業などが自立まで支える「伴走型就労支援事業」も行われた。
 これらのプロジェクトには、ささやかながら、わが社も協力させていただいている。
 さらに支援機構では、ホームレスの方々の住居となる「抱僕館」を今秋に建設予定だ。
 いま、日本では孤独死や自殺が問題になっている。奥田理事長によれば、背景には他人に「助けて」と言えない人々の急増があるという。われわれは、本当に困ったとき、素直に「助けて」と言える社会を作る必要があるのではないだろうか。
 わたしは、拙著『隣人の時代』(三五館)に「助け合いは人類の本能だ!」と書いた。北九州をぜひ、人類の本能が大いに発揮される街にしたい。そう、他人への思いやりにあふれた日本一の「助け合い」の街にしたい。そう、他人への思いやりにあふれた日本一の「助け合い」の待ちにしたい。
 その名も「互助会」という組織を運営するわが社は、「助け合い日本一の街」の誕生に向けて少しでもお役に立ちたいと思う。