第8回
一条真也
「リーダーになるために」
ようやく、衆議院選挙が終わりましたね。
多くの政党が乱立し、さまざまな政策を掲げた熱い選挙でした。新聞などでは「誰が次の総理大臣にふさわしいですか」などのアンケート調査も行われました。その結果を見ると、日本人にとっての理想のリーダー像が浮き彫りになったような気がします。
孔子が開いた儒教は帝王学、つまり東洋におけるリーダーシップの学でもありました。『論語』には、たとえリーダーを志した動機が冨や地位であっても構わないと述べられています。そもそも、立派なリーダーとなるべく人格を磨けば、冨や地位には関心がなくなっていくというのです。では、どうすれば、人格を磨くことができ、立派なリーダーになれるのでしょうか。孔子によれば、まず次の四つのことを守ってみることが大切です。
「子、四を絶つ。
意なく、必なく、固なく、我なし。」〈子罕篇〉
「自分勝手な心を持たず、無理強いはせず、執着もせず、我を張らない」という意味ですが、要するに必要以上のプライドやエゴを捨てろということですね。さらに、リーダーを志す者なら、よく人の話を聞かなければなりません。
「君子は言を以って人を挙げず、
人を以って言を廃せず。」〈衛霊公篇〉
「立派な人は、巧みな言葉を聞いてもそれに左右されず、また相手がどのような身分の人でも、きちんと話を聞く」という意味です。
人の話をちゃんと聞くというのは簡単なようで、じつは意外と難しいもの。人は往々にして、自分に都合のいい話ばかりを聞きたがります。そうでなければ地位の高い人の話は熱心に聞きますが、一方で、目下の人の話は軽んじて適当に聞くというのもよくあることです。
しかし、それでは少しも自分のためになりません。相手の話を聞くだけでなく、自分の意思を正確に伝えられるようになったら完璧と言えるでしょう。気をつけたいものです。
「民はこれに由らしむべし。
これを知らしむべからず。」〈泰伯篇〉
「人を従わせることはできるが、その意図を伝えることは難しい」という意味です。
『論語』には、「君子」という理想のリーダーになるためには自分の人格を向上させることが必要であると繰り返し説かれています。
まずは、自分の都合よりも、他人の都合を優先できるようにならないとなりませんね。