第7回
一条真也
「信用される人になろう」
「信用第一」とよく言われますが、たしかに人間社会で「信用」ほど大切なものはありません。
孔子は次の言葉を『論語』に残しています。
「人として信無くんば、其の可なるを知らざるなり。」〈為政篇〉
「信用は人と人が相交わる上で必ず必要な徳である」という意味ですね。
リーダーシップにおいても「信用」が最も重要です。リーダーは、何より部下から信用されなければなりません。孔子は言いました。
「君子は信ぜられて而る後に其の民を労す」〈子張篇〉
「君子はまず十分に信用されてから民を使う」という意味です。信用されていさえすれば、民は喜んで働いてくれるが、信用が得られていないうちに使うと、民は自分たちを苦しめようとしていると思って怨みを抱くというのです。現代の会社組織にも通じる話ですね。
さて、『論語』には「信用」についての究極とも呼べる言葉があります。
「以て六尺の孤を託すべく、以て百里の命を寄すべく、大節に臨んで奪うべからず。君子人か、君子人なり。」〈泰伯篇〉
「孤児をあずけられるほど人に信用されている人になら、政治もまかされるだろう。なぜなら、そういう人の信念はけしてぶれない」という意味です。リーダーを目指そうと思うのなら、自分が人に信頼されているか、胸に手を当ててよく考えてみなければなりません。
もちろん、今はその資格がなくても構いません。ただ、信頼が得られるように人格を磨くための努力をすることが大切です。
さらに、孔子の弟子である子張は、理想の人物像について次のように語ります。
「士は危うきを見ては命を致し、得るを見ては義を思い、祭りには敬を思い、喪には哀を思う。其れ可ならんのみ。」〈子張篇〉
これは、「立派な人とは、人のピンチに出くわせば命を投げ出し、利益を見てもその前に道義を考え、祭りではうやまうことを考え、葬儀では悲しむ人のことだ」という意味です。
つねに利益よりも道義を考え、いざというときには自分を犠牲にでき、さらには情の深い人になりたいものです。このような人こそ、他人から信用される人だと言えるでしょう。