第3回
一条真也
「何をするにも、まずは健康」
孔子は、「何をするのも、まずは元気であることが大事」と考えていました。いくら学ぼうという向上心があっても、病気ばかりしていては学問を継続するのは難しいからです。
そう、学問をするうえで健康はとても大事なのです。孔子は、自身の健康の秘訣を次のように『論語』の中で述べています。
「君子は食飽かんことを求むること無く、居安からんことを求むること無し。事に敏にして言を慎しみ、有道に就きて正す。学を好むと謂うべきのみ。」〈学而篇〉
これは、以下のような意味となります。
「食べすぎずに腹八分目にする。あまり快適な家に住もうとしない。仕事をがんばり、言葉は慎重にして、信頼できる人に自分のまちがいを正してもらう。そうすれば、健康になり、学問もうまくいく」
腹八分目が健康に良いのは、わかりますね。
「快適な家に住むな」とは、人は快適さに慣れるとダラダラとした生活を送り、不健康になるということです。仕事が充実していれば心身もおのずと健康になり、言葉は選んで使えば余計なトラブルに巻きこまれずストレスも減ります。そのうえで、信頼できる人にアドバイスをもらえば、怖いものなしとなります。いくらでも学問がはかどるというものですね。
健康でいることは、なにも自分のためだけではありません。次の言葉があります。
「孟武伯、孝を問う。子の日わく、父母には唯だ其の疾をこれ憂えしめよ。」〈為政篇〉
「どうすれば、親孝行ができるのか?それは、病気以外のことで親に心配をかけないということだ」という意味になります。
子どもが病気になれば、当然、親は心配しますね。だからといって、一生のあいだ、一切の病気にかからないというのも難しいでしょう。ならば、せめて病気以外で心配をかけないことが、いちばんの親孝行といえるのではないでしょうか。子どもが健康でいることほど、親を喜ばせることはありません。
わたしにも東京で一人暮らしをしている大学生の娘がいますが、いつも「健康でいてほしい」と願っています。それが親というものなのです。
もちろん、あなたの健康を心配するのは親だけではありません。友人や恋人も、あなたが健康でいることを望んでいます。
つまり、「自分の体は自分のものだけではない」ということを忘れてはいけないのです。