第50回
一条真也
『聞く 笑う、ツナグ。』高島彩著(小学館)
著者の名前を知らない人は少ないでしょう。「好きな女性アナウンサーランキング」(オリコン)で第1回から5回連続で1位に輝き、殿堂入りを果たした、日本一人気のある女子アナです。
著者は、バラエティ番組などでタレントを立てることを忘れない「気配りの人」として有名です。そんな彼女が初めて出した本とあって、興味深く読みました。
いやはや、そのへんのタレント本とまったく違って、これは大変な名著だと思いました。何より、「どうすれば、人間関係が良くなるか」という実践的なアドバイスに満ちています。
「この若さでここまで達観しているとは!」と思った内容も多いです。それは、彼女が一般の若い女性の生い立ちと比べて、苦労をしているからでしょう。
著者が5歳のときに、俳優だった父親が病気でこの世を去りました。以来、母と兄の3人で支え合って生きてきました。著者は、自分という人間のほとんどを占めているのは「母の愛」だと言い切り、次のように述べます。
「母は暇さえあれば、私に家族の思い出話を聞かせてくれました。亡くなった父の記憶を鮮明なカラーの映像で思い出せるのは、私が本当に見た景色というより、毎日のように母が話してくれた思い出が、私のものになっているからだと思っています」
「父がいてくれたら、もっと幸せなのになあ」と思ったことが何度もありましたが、著者は次のように考えたそうです。
「もし父が今も生きていたら、今の私はありません。ものは考えようと言いますが、父は、私や家族に降りかかってくるはずのアンラッキーを、すべて背負って亡くなっていったのではないかと思っています。変な言い方になりますが、今の私があるのは、母と兄がいてくれるおかげで、父がいないおかげなのです」
このように、著者はいつも亡父という「死者」を意識しながら生きてきました。
3月11日に放映された東日本大震災の特番でキャスターを務めていた著者は、とてもその場に馴染んでいました。きっと、死者のことを語り、遺族の悲しみに触れるという行為そのものが著者の人生と重なっていたからではないでしょうか。わたしは、そう感じました。
周囲の人たちから好かれたい、そして幸せになりたい、そんなすべての女性に本書を薦めたいと思います。
著者は昨年10月に「ゆず」の北川悠仁さんと結婚しました。これから、きっと素敵な家庭を築くことでしょう。