第25回
一条真也
『何のために論語を読むのか』孔健著(致知出版社)
このたび、わたしは第2回孔子文化賞を受賞いたしました。孔子および「論語」の精神を普及した人物に贈られる賞で、尊敬する稲盛和夫氏との同時受賞ということで、身に余る名誉であると思っています。
孔子文化賞は『一般社団法人・世界孔子協会』から贈られますが、その会長が本書の著者である孔健氏です。孔子直系の第五家系藤陽戸75代当主として生を受けた方です。つまり、孔子の子孫ということですね。孔子家では物心がつくと同時に学問を叩き込まれるそうで、著者も4歳のときから祖父より『論語』をはじめとした「四書五経」を学んだといいます。
「人間の幸福とは、いったい何でしょうか」と著者は問います。そして、お金や高い地位や権力などは本来の人間の幸福とは無縁であり、他人に受け入れられず、自己中心的な世界でしか生きられない人間は不幸であると喝破します。その上で、著者は次のように述べています。
「人間の幸福とは、物質面でも精神面でも、自分自身が『素晴らしい』と心から感じるものを追い求めることです。そして、そのことが世のため人のために役立つならば、こんなに素晴らしい人生はありません」
著者は、「孔子は、こんな『情熱』の人生を理想とし、そのために正しい自分観、人間観、世界観を育むことの意味を教えたのです」と述べます。
『論語』を読むこと、『論語』に学ぶことの意味、その基本をしっかり教えてくれる本です。本書を読めば、『論語』とは幸福論そのものだということがよくわかります。わたしも、『世界一わかりやすい「論語」の授業』(PHP文庫)を書くにあたり、本書から多くを学びました。