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一条真也
「のこされたあなたへ〜きっとまたあえるから」

 

こんにちは、一条真也です。
2012年3月11日、東日本大震災の1周年を迎えました。
わたしたち日本人が経験したことがない未曾有の大災害であり、多くの方々が犠牲になりました。
わたしは、昨年末に『のこされた あなたへ』(佼成出版社)という本を書きました。 サブタイトルは「3・11 その悲しみを乗り越えるために」です。そう、同書は東日本大震災で愛する人を亡くした方に向けて書いた本です。
同書の帯には、「死別はとてもつらく悲しい。けれど、決して不幸な『出来事』ではありません。」と大きく書かれています。また、「グリーフケアの入門書にして決定版」というコピーが赤く囲まれています。そして、「大切な人を突然失ったとき、どうやって立ち直ればよいのか。」とも書かれています。
わたしにとっては、『愛する人を亡くした人へ』(現代書林)に次ぐグリーフケアの著書となりました。わたしの持てるすべてを総動員して書き上げました。
『のこされた あなたへ』では、「葬儀ができなかったあなたへ」「遺体が見つからないあなたへ」「お墓がないあなたへ」「遺品がないあなたへ」「それでも気持ちのやり場がないあなたへ」と、具体的な「あなた」へのメッセージを綴り、最後に「別れの言葉は再会の約束」という文章を書きました。
葬儀ができない、遺体がない、墓がない、遺品がない、そして、気持のやり場がない・・・・・まさに「ない、ない」尽くしの状況は、今回の災害のダメージがいかに甚大であり、辛うじて助かった被災者の方々の心にも大きなダメージが残されたことを示していました。現地では毎日、「人間の尊厳」というものが問われました。亡くなられた犠牲者の尊厳と、生き残った被災者の尊厳がともに問われ続けていたのです。
この国に残る記録の上では、これまでマグニチュード9を超す地震は存在していませんでした。地震と津波にそなえて作られていたさまざまな設備施設のための想定をはるかに上回り、日本に未曾有の損害をもたらしました。じつに、日本列島そのものが歪んで2メートル半も東に押しやられたそうです。それほど巨大な力が、いったい何のためにふるわれ、多くの人命を奪い、町を壊滅させたのでしょうか。 あの地震、津波、原発事故にはどのような意味があったのでしょうか。
そして、愛する人を亡くし、生き残った人は、これからどう生きるべきなのか。
そんなことを考えながら、残された方々へのメッセージを書き綴ってみました。
もちろん、どのような言葉をおかけしたとしても、亡くなった方が生き返ることはありませんし、その悲しみが完全に癒えることもありません。
しかし、少しでもその悲しみが軽くなるお手伝いができないかと、わたしは一生懸命に心を込めて『のこされた あなたへ』を書きました。時には、涙を流しながら書きました。
大震災の犠牲になった方の遺族・関係者のみならず、すべての"愛する人を亡くした人"に同書を読んでいただきたいと思います。
その中の言葉のどれか1つでも"あなた"の心に響き、その悲しみが少しでも軽くなってくれれば、こんなに嬉しいことはありません。
同書の最後では、とても大切なことを読者にお伝えしました。それは、のこされた人は、今は亡き愛する人に必ずまた会えるということです。死別はたしかに辛く悲しい体験ですが、その別れは永遠のものではありません。"あなた"は、また愛する人に会えるのです。
風や光や雨や雪や星として会える。
夢で会える。
あの世で会える。
生まれ変わって会える。
そして、月で会える。
世の中には、いろんな信仰があり、いろんな物語があります。
しかし、いずれにしても、必ず再会できるのです。
ですから、死別というのは時間差で旅行に出かけるようなものなのです。先に行く人は「では、お先に」と言い、後から行く人は「後から行くから、待っててね」と声をかけるのです。それだけのことなのです。
考えてみれば、世界中の言語における別れの挨拶に「また会いましょう」という再会の約束が込められています。日本語の「じゃあね」、中国語の「再見」もそうですし、英語の「See you againn」もそうです。フランス語やドイツ語やその他の国の言葉でも同様です。
これは、どういうことでしょうか。古今東西の人間たちは、つらく、さびしい別れに直面するにあたって、再会の希望をもつことでそれに耐えてきたのかもしれません。 でも、こういう見方もできないでしょうか。二度と会えないという本当の別れなど存在せず、必ずまた再会できるという真理を人類は無意識のうちに知っていたのだと。その無意識が世界中の別れの挨拶に再会の約束を重ねさせたのだと。そう、別れても、わたしたちは必ず再会できるのです。
「また会えるから」この言葉を合言葉に、愛する人との再会の日を楽しみに、生きていきませんか。 愛する人を亡くしたあなたは、愛する人との再会を希望として、生き延びて下さい。そして、さまざまな信仰や物語を超えて、いずれにしても、必ず再会できるという真実を絶対に忘れないで下さい。
これからも、世界では多くの地震や津波や台風で、そしてテロや戦争で、多くの人命が失われることでしょう。また、天災や人災でなくとも、病気や事故などで多くの方々がこの世を卒業されていくでしょう。
愛する人と死に別れることは人間にとって最大の試練です。
しかし、試練の先には再会というご褒美が待っています。
けっして、絶望することはありません。
けっして、あせる必要もありません。
最後には、また会えるのですから。
どうしても寂しくて、悲しくて、辛いときは、どうか夜空の月を見上げて下さい。
そこには、あなたの愛する人の面影が浮かんでいるはずです。
愛する人は、あなたとの再会を楽しみに、気長に待ってくれることでしょう。
2012.3.15