第11回
一条真也
「ゴーヤパーティー」
今回は、兵庫県にお住まいの51歳のJさんという女性からのエピソードです。
お便りの冒頭には「マンションというのは、とかく隣人との交流の少ないものだ」と書かれていました。ところがある日、Jさんの住むマンションの掲示板に「ゴーヤパーティのお誘い」という書き込みがありました。
マンションの敷地内で栽培したゴーヤを使って、料理人である住人の1人がゴーヤチャンプルーなどのゴーヤ料理を作って、マンションに住む人々に振る舞おうという試みでした。
Jさん夫婦も当日、「飲み物は各自持参でお願いします」というそのパーティに参加しました。
駐車場に集まった住民は10人。50世帯ほどが入居していますので、まずまずの人数ではないかと思ったそうです。
「昔、ピアノを教えていたの」と、 よくあいさつを交わす同じ階の女性が言います。
「僕は、しまなみ街道の橋を作ったんですよ」という男性は橋を架ける仕事をしていました。
缶ビールを飲みながら、あっという間に1皿目のゴーヤチャンプルーがなくなりました。
「こういうのはどうでしょう」
飲食店を経営している男性が、ゴーヤの漬け物と、ゴーヤの種のカラカラに炒ったものを出してくれました。
「ビールに合うと思いますよ。その間に2皿目を作ってきますから」
そう言って、その人はいったん自分の部屋に戻りました。
「私は、地元の小学校だったんです」
他の女性が言いました。
「実は、ボクもなんですよ」と言い出す男性も現れて、ちょっとした同窓会が始まりました。
その男性は小さな娘さんを連れていました。
「苦いから子どもには無理だって言ったんですけど」と、 その人は頭をかきながら言います。
ちょうど2皿目のゴーヤチャンプルーが湯気を立てていました。「おいしい」と言いながら、小学校2年生の女の子が、苦いゴーヤを嬉しそうに食べていました。
Jさんは「こういうのって何だかとてもいいな」と思いました。そして、これからマンションの敷地内や道で会ってあいさつする時、心から「こんにちは」って言えそうな気がしたとか。
そうです、このゴーヤパーティーこそ「隣人祭り」です。あなたも、同じ街や集合住宅に住む人々に声をかけて、心を通わせませんか。