第5回
一条真也
「わたしの妹」
今回は、山形県東根市に住むDちゃんという12歳の女の子からの「わたしの妹」というエピソードをご紹介します。
Dちゃんには妹が一人います。とても活発で友達も多いDちゃんとは正反対で、妹はちょっぴり内気。友達と遊んだり、近所の人に自分からあいさつしたりするのは苦手だとか。
そんな妹ですが、同じ町内の大型犬を飼っている老人は特別。妹はその人に学校のことや友だちのことなどいろいろと話をしてくるのです。
どうして内気な妹が他人と仲良くなったのか不思議だったので、Dちゃんはたずねてみました。すると、妹はその理由を話し始めました。
妹が公園で遊んでいると、毎回決まって同じ時間ぐらいに犬を連れたおじいさんがやって来ました。最初は犬にほえられて、すごく怖かったそうです。でも、毎日会ううちに、ほえなくなりました。
頭のいい犬なので、妹のにおいを覚えたのだそうです。もう怖くなくなった妹は、犬の頭をなでさせてもらったりしました。その犬の名前は「さくら」といいました。
「さくら」と仲良くなったら、その犬をつれている人とも話をするようになり、「さくらのおじいちゃん」と呼ぶようになったのです。
「さくらのおじいちゃん」はおばあさんと二人暮らしで、私たちのような孫がいるのだけれど、遠くに住んでいるためなかなか会えないのだそうです。そのせいか、妹のことを本当の孫のように思い、いろいろ話をしてくれたのでした。
「さくらのおじいちゃん」と出会った年の小学校の運動会で、妹はリレーの選手に選ばれました。それを「さくらのおじいちゃん」にも話していたようで、当日、おじいちゃんは妹の応援をするためだけに、わざわざ小学校まで来てくれました。ところが妹は、その日熱を出し急に欠席。そのことを知らないおじいちゃんは妹のことを一生懸命探してくれたのです。
今年の運動会は残念だったけれど、Dちゃんも妹も、なんだか、家族ではないけれど、家族のように応援してくれる人の心にふれて、あたたかい気持ちになりました。来年こそは、元気いっぱいに走る姿を見てもらえるようにと思いました。
最後に、Dちゃんは「こんなことをきっかけに、もっと妹の友達の輪が広がり、他の人ともいろいろなおしゃべりができるような活発な妹になってほしいなぁと思いました」と書いていました。Dちゃん、きっと、そうなると思うよ!