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一条真也
ご先祖さまとのつきあい方

 

日本民俗学の父である柳田國男に『先祖の話』という著書がある。敗戦の色濃い昭和20年春に書かれた本だ。柳田は、連日の空襲警報を聞きながら、戦死した多くの若者の魂の行方を想って書いたという▼柳田がもっとも危惧し恐れたのは、敗戦後の日本社会の変遷だった。具体的に言えば、明治維新以後の急速な近代化に加え、日本史上初めてとなる敗戦によって日本人の「こころ」が分断されてズタズタになることだった▼柳田の不安は、それから60年を経て、現実のものとなった。日本人の自殺、孤独死、無縁死が激増し、通夜も告別式もせずに火葬場に直行するという「直葬」も増えている。家族の絆はドロドロに溶け出し、「血縁」も「地縁」もなくなりつつある▼そして、日本社会は「無縁社会」と呼ばれるまでになった。この「無縁社会」の到来こそ、柳田がもっとも恐れていたものだったのではないか。わたしたちは、日本社会のモラルをつくってきたはずの「先祖を敬う」という意識を復権しなければならない▼今こそ柳国國男のメッセージを再びとらえ直し、「血縁」の重要性を訴える必要がある。そのように痛感したわたしは、『ご先祖さまとのつきあい方』(双葉新書)を上梓した。ぜひ、ご一読を乞う。(一条)
2010.10.10