2010
08
株式会社サンレー

代表取締役社長

佐久間 庸和

「実行力を身につけ、

 現場の問題に対応しよう!」

グリーフケアの開始

 6月21日、サンレーグランドホテル内に「ムーンギャラリー」がオープンしました。主に三つの機能があります。
 第一に、葬儀の事前相談窓口としてのフューネラルサロン機能。第二に、供養関連商品を展示販売するメモリアル・ショップ機能。そして第三に、ご遺族の悲しみを癒すグリーフケア・サポート機能です。
 特に三つめの機能が重要で、葬儀後のご遺族の会「月あかりの会」を同時に発足しました。さまざまなセレモニーやイベントなどを通じて、グリーフケア・サポートを行います。また、専門家のよるカウンセリングなどもお世話する予定です。
 この「ムーンギャラリー」および「月あかりの会」は大きな反響を呼び、連日多くのお客様が訪れられています。「朝日新聞」をはじめとした多くのマスコミにも取材していただきました。九月には、いよいよ小倉紫雲閣の隣接地にオープンします。

実行力が大切である

 多くの方々から、「新しい試みをスタートされて素晴らしいですね」と言われましたが、じつは、わたしの心は晴れませんでした。というのも、「もっと早く実現すべきだった」いう想いでいっぱいだったからです。 
 グリーフケア・サポートの重要性はもう20年も前から知っていましたし、数年前には『する人を亡くした人へ』という本も書きました。あのとき、一気に「月あかりの会」を組織し、「ムーンギャラリー」をオープンすべきだったと思っています。
 これまで、この社長訓示で「情報力」「思考力」「創造力」とお話してきましたが、良い情報を持っていようが、いくら素晴らしいことを考えていようが、いくら創造性が豊かだろうが、それらをアウトプットしなければ何の意味もありません。すなわち、「実行力」というものが大切なのです。
 たとえば、本を書くことなども実行力です。『葬式は、要らない』の反論を多くの人が書こうと思っていたかもしれませんが、結果として、わたしが最も早く実行に移し、『葬式は必要!』を出版することができました。

ドラッカー理論の実行

 もちろん、出版だけではありません。わたしは実際の経営において、さまざまな考えやアイデアを実行してきました。
 その最たるものこそ、ドラッカーの経理理論の実行です。かつて、わが社は赤字にあえいでいました。2001年に社長に就任したわたしは、「選択と集中」「知識化」「イノベーション」をはじめとする数々のドラッカー理論を導入し、それを実行してきました。社員のみなさんの理解と協力のかげで、わが社の経営内容は格段に改善されました。
 最初に導入したドラッカー理論は「選択と集中」でした。本業である冠婚葬祭の事業エリアは北海道の富良野から沖縄の石垣島まで日本全国にまで及んでいましたが、それをシェアが一位の地域だけ残して、残りはすべて撤退しました。多岐にわたる関連事業についても同様です。
 そのせいで、わが社の財務内容は急速に改善され、残した事業の業績もすべて向上しました。

実行してこそ評価される

 もともとわが社には日本初のセレモニーホールとされる「小倉紫雲閣」の建設など、新しいアイデアを実行に移すという遺伝子がありました。
 その後、セレモニーホールと高齢者用のカルチャーセンターやスポーツクラブを組み合わせた世界初の高齢者複合施設「サンレーグランドホテル」を建設しました。
 「選択と集中」にしろ、「知識化」にしろ、「イノベーション」にしろ、とにかく、サンレーほど、ドラッカー理論の導入に努め、それを実行してきた会社はないのではないのかと密かに自負しています。
 ドラッカーは、「哲学者は考えるのが仕事だが、政治家や経営者は考えたことを実行に移すことが仕事」といったような言葉を残していたと記憶していますが、まさに経営というものは実行して初めて評価されるのです。

「知行合一」とは何か

 「実行力」の大切さは、経営者だけの問題ではありません。サンレーグループの各職場で働くみなさんに当てはまることなのです。
 実行の「行」というものを重視し、「知行合一」という思想を打ち立てたのが、陽明学を開いた明の王陽明です。彼は、本当に知るということは創造することであるとして、「知は行の始めなり。行は知の始めなり」と説きました。「知」というものは行ないの始めであり、「行」というものは「知」の完成であるというのです。
 「知行合一」とは何か。行動の決定において、言語化された「知」だけでは不十分です。それに言語化されない「暗黙知」を加えなければなりません。
 平たく言うと、施設にゴミなどが落ちているのを見たとき、「あっ、ゴミが落ちている」と思い、「拾おうかな」と考えるのではなく、ゴミを見た瞬間に体が動いて知らないうちに拾ってしまう。これは「江戸しぐさ」の精神などにも通じるものですが、「知行合一」の本質とはこのようなものだと思います。
 「知行合一」をよく理解し、情報力や思考力、創造力のみならず、実行力を併せ持った企業しか生き残れない時代です。
 わが社には、まだまだ素晴らしいアイデアや考え方や文化があります。これからも、世の中を良くするアイデアを知り、それを実行に移していきましょう!

 世の中をより良くできる考えは
    知るのみならず行ふがよし  庸軒