2010
07
株式会社サンレー

代表取締役社長

佐久間 庸

「創造力を身につけ、

 お客様に満足していただこう!」

横に跳ぶということ

 いま、あらゆる業界の未来が見えにくいと言われています。
 業界どころか、経済や社会そのものの先が見えにくい現在、創造的発想や創意というものが求められます。
 それでは、創造的発想や創意というものは、どうすれば生まれるのでしょうか。他人と同じことをやっていてもダメです。
 動物行動学者の竹内久美子氏は、「発想を変えて、思い切って跳びなさいと言われたら、みんな前に跳ぶことしか考えない。前に跳ぶのは誰でもできることで、横に跳ぶことが必要なのだ」と述べています。
 かの石原慎太郎東京都知事はこの話にいたく感心し、創意というものの本髄はそこにあると思ったそうです。
 ある時、多くの経営者が集った勉強会で石原知事は「横に跳ぼうと思って跳んだわけではないけれど、恐らく、ふと思いついたことというのは、横に跳んでいるのではないか。それができる人が本当の創業者になれるのではないか」と述べました。

ウォークマンとカラオケ

 ソニーの創業者である井深大は、かつて、芝浦の工場でジーンズを履いた若い社員が手作りのテープレコーダーをポケットに入れて音楽を聞きながら働く姿を見ました。
 彼は大いに感心しました。音楽とは座ってじっと聴くだけではなく、作業の邪魔にならなければ仕事をしながらでも聴きたいだろうし、ただ歩くよりも音楽を聴きながら歩く方がリズミカルに歩けるのではないか。そのように彼は考えました。
 その結果、あの伝説のウォークマンが誕生したのです。これは井深大が横に跳んだということでしょう。
 また、カラオケは世界に誇る日本の発明ですが、考え出したのはクラリオンの創業者である小山田豊です。
 昭和49年の秋、海外駐在員たちを引きつれて水上温泉で宴会を開いたとき、呼んだ芸者が年増ばかりで、しかも歌を歌おうにもろくに三味線も弾けない者が多かったそうです。小山田は落胆しました。
ふと、芸者の代わりに伴奏の機械があれば面白いと発想しました。それがカラオケのアイデアの元になったのです。彼も横に跳んだのです。

読書が創造力を育てる

 人間は、まったくゼロから創造性を発揮することはできません。偉大な創造の背景には、必ず先達の歩みがあります。
 その意味で、創造の達人とは読書の達人でもあります。プロイセンの鉄血宰相ビスマルクに「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という有名な言葉があります。
 生物のなかで人間のみが、読書によって時間を超越して情報を伝達できるのです。人間は経験のみでは、一つの方法論を体得するのにも数十年かかりますが、読書なら他人の経験を借りて、一日でできます。つまり、読書はタイム・ワープの方法なのですね。
 人生を商売にたとえてみると、すべて仕入れと出荷から成り立っています。そこで問題となるのは仕入れであり、その有力な仕入先が読書なのです。つまり、本を読むことによっての学習力が創造力につながるのですね。

顧客と価値を創造する

 創造力というのは、ある意味でマーケティングやイノベーションの目的でもあります。ドラッカーは、「顧客の創造」としてのマーケティングと「価値の創造」としてのイノベーションを会社の発展に不可欠の二つの要素と位置づけました。
 マーケティングは顧客からスタートします。すなわち顧客の現実、欲求、価値からスタートするのです。「われわれは何を売りたいか」ではなく、「顧客は何を買いたいか」と問わなければなりません。
 たとえば、化粧品について考えてみると、レブロンを名だたる巨大企業に育てあげた天才的経営者チャールズ・レブソンは「工場では化粧品を作る。店舗では希望を売る」との名言を残しました。
 消費者、いやお客様が本当に買うものは、健康な歯であって、歯ブラシではありません。穴であって、ドリルではありません。娯楽であって、CDやDVDではありません。清潔な衣料であって、洗濯用洗剤ではありません。コミュニケーションであって、携帯電話ではないのです。
 この「顧客は何を買いたいか」を知ってこそ、マーケティングもイノベーションも初めて可能になります。

新しいサービスを創造しよう!

 当社は、結婚式や葬儀ではなく、根本的には「人の道」を売っています。それはミッションである「人間尊重」につながるものです。
 冠婚や葬祭の施行部門でも、互助会の営業部門でも、また管理部門でも同じことです。本当にお客様の求めているものを知り、満足していただこうと思ったら、自然とさまざまなアイデアが生れてくるはずです。
 わが社が推進している「隣人祭り」や「グリーフケア・ワーク」は、まさにお客様に満足していただくための創造的なアイデアです。もちろん「ムーンギャラリー」もそうです。そこには、互助会の未来像があるとさえ言えるでしょう。
 冠婚葬祭という営みの本質をとらえた上で、多くの本を読んで創造力を磨きましょう。そして、各部門それぞれの立場で、大いにお客様に満足していただく新サービスを生み出そうではありませんか!

  創造の母とは本と悟るとき
     新しきもの生まれ出るなり  庸軒