こんにちは、一条真也です。
これから、冠婚葬祭を中心に「こころ」をテーマにしたエッセイを月に二度お送りしたいと思います。さて、いまは四月。春爛漫です。春といえば、なんといっても、花ですね。 みなさんは、もう花見をされましたか?
冠婚葬祭業というのはとにかく花と縁が深いこともあり、わたしも男ながらに花には興味があります。というより、花が大好きです。
わたしの趣味のひとつにガーデニングがありますが、わが家のささやかな庭にはさまざまな花が植えられています。
一年を通じてその季節ならではの花を楽しんでいますが、四月の中旬になれば、庭で一番の老木である桜が花を咲かせはじめます。満開の桜の樹を見上げると、空の青に桜の薄いピンク、その色のコントラストの見事さに時の過ぎるのも忘れて見とれてしまいます。そして、さらに美しいのは、散りゆく桜の花びらが風が吹くたびに文字通りの桜吹雪になって宙に舞うときです。くるくる舞いながら無数の花びらが落ち、やがて地面は薄いピンクのカーペットになってしまいます。
そのさまを見て、わたしは「人の人生も桜と同じだなあ」としみじみ思いました。そして、ピンクのカーペット上で「花は咲き やがて散りぬる 人もまた 婚と葬にて 咲いて散りぬる」という短歌を詠んだことがあります。
かくも花を愛しているわたしですが、いつも思うことがあります。
それは、花はこの世のものにしては美しすぎるということです。 臨死体験をした人がよく、死にかけたとき、「お花畑」を見たと報告しています。
きっと、花とはもともと天国のものなのでしょう。
天上に属する花の一部がこの地上にも表れているのだと思います。 そうでないと、ただならぬ花の美はとても理解できません。
葬儀の場面でも多くの花を飾りますね。
芸術のことを英語で「ART」といいますが、わたしは、つねづね葬儀こそはARTそのものであると思っています。わたしは、「ART」とは天国への送魂術であると思っています。すばらしい芸術作品に触れて心が感動したとき、魂が一瞬だけ天国に飛ぶのです。肉体はこの地上に残したまま、精神だけを天国に連れてゆくのです。 絵画や彫刻などはモノを通して、いわば中継地点を経て天国に導くという間接芸術であり、音楽こそが直接芸術であると主張したのは、かのヴェートーベンです。
芸術とは天国への送魂術なのです。いずれにしても天上に属する花の一部がこの地上にも表出しているのだと思います。そうでないと、ただならぬ花の美はとても理解できません。もうおわかりのように、葬儀というセレモニーこそは「ART」そのものなのです。なぜなら葬儀とは、人間の魂を天国に送る「送儀」であり、人間の魂を天国に引き上げるという芸術の本質をダイレクトに行なうものだからです。かつ、直接芸術たる音楽をはじめ、あらゆる芸術ジャンルを駆使する総合芸術でもあります。その中でも、もっとも重要な役割を果たすのが花です。
なにしろ、この世に存在するものの中で、花だけがあの世のものなのですから。