2010
03
株式会社サンレー
代表取締役社長
佐久間 庸和
「結縁力を身につけ
無縁社会を有縁社会にしよう!」
●無縁社会の衝撃
先日放映されたNHKスペシャル「無縁社会〜無縁死3万2千人の衝撃」の反響が凄まじいようです。
日本の自殺率は先進国中でワースト2位ですが、ここ最近、「身元不明の自殺と見られる死者」や「行き倒れ死」などが急増しているそうです。引き取り手のない遺体が増えていく背景には、日本社会があらゆる「絆」を失っていき、「無縁社会」と化したことに大きな原因があります。
かつての日本社会には「血縁」という家族や親族との絆があり、「地縁」という地域との絆がありました。日本人は、それらを急速に失っているのです。
個人にとって血縁とは縦糸であり、地縁とは横糸でもあります。人間の「こころ」は凧のようなものであり、糸が切れると不安定に宙をただよい、最後はどこかに飛んで行ってしまいます。
●むすぶ力とは何か
昨年、サンレーグループの冠婚部門の感動実話集である『むすびびと』が出版され、話題を呼びました。
"むすびびと"は何を結ぶのか。
まずは、新郎新婦の「魂」を結びます。すなわち、「結魂」のお手伝いをするのです。
日本人の離婚が年間で30万組を超え、なお増え続ける一方ですが、その負の流れを食い止めるキーワードこそ「結魂」です。
かつて古代ギリシャの哲学者プラトンは、元来一個の球体であった男女が、離れて半球体になりつつも、元のもう半分を求めて結婚するものだという「人間球体説」を唱えました。プラトンのいう球体とは「魂」を例えたものであったと思います。
"むすびびと"は、男女の未熟な魂を結んで夫婦という完成品を作るのです。
●なぜ、離婚が増えたのか
でも、"むすびびと"が結ぶものは男女の魂だけではありません。両家の家族の絆をも強く結びます。
現在では、新郎新婦お二人の名前で披露宴が行なわれるケースがほとんどですが、少し以前までは「○○家、△△家、結婚披露宴」というふうに、両家の結びつきが結婚式、披露宴のメインテーマでした。
この20年で日本人の結婚式や披露宴は大きく変化しました。仲人、結納、金屏風といったものがどんどん消え、和装を着る花嫁さんも減る一方です。
結婚式や披露宴のキーワードも「自由」「個人主義」「合理主義」に集約されてきました。その結果、25万組を超えるほど離婚が増加しました。この20年間で日本人の離婚は二倍になりました。
●「家族」が不変のキーワード
どんなに時代が変わろうとも、わたしは結婚式や披露宴のキーワードは「家族」であると思います。昔の日本の婚礼は「家」がキーワードでしたが、それはなくなりました。でも、今でも「家族」はキーワードです。
最近、社会がどんどん悪くなっていますね。凶悪犯罪はさらに増加し、より残虐になっている。親が子を殺し、子が親を殺すような事件も多くなっています。まさに「ありえないことなどありえない」状況ですが、日本の家族というものがドロドロに溶け出していることが最大の原因でしょう。
未曾有の不況による貧困社会を迎えた現代の日本。日本人の心はますます荒廃するばかりです。その心を救うものは、やはり家族しかないのではないでしょうか。
●「縁」こそ冠婚葬祭業のインフラ
この世には「縁」というものがあります。すべての物事や現象は、みなそれぞれ孤立したり、単独であるものは一つもありません。他と無関係では何も存在できないのです。すべてはバラバラであるのではなく、緻密な関わり合いをしています。この緻密な関わり合いを「縁」と言うのです。
冠婚葬祭業というのは、結婚式にしろ葬儀にしろ、人の縁がなければ成り立たない仕事です。この仕事にもしインフラというものがあるとしたら、それは人の縁に他なりません。
営業においても「縁」を中心として戦略を立て、展開すべきです。すなわち、家族や親族の「血縁」をはじめ、地域の縁である「地縁」、学校や同窓生の縁である「学縁」、職場の縁である「職縁」、そして趣味の縁である「道縁」の五縁を意識した営業を徹底的に行なうのです。
●縁を結び、有縁社会を創造する
沖縄の人々は、日本中のどこよりも先祖と隣人を大切にします。
でも、それだけではありません。「いちゃりばちょーでい」という言葉は、「一度会ったら兄弟」という意味です。沖縄では、あらゆる縁が生かされるのですね。まさに「袖すり合うも多生の縁」です。
人間は一人では生きていけません。そして、冠婚葬祭業者であるわたしたちは、冠婚部門、葬祭部門、そして互助会部門に関わらず、全員が多くの方々の縁を結ぶ、"むすびびと"にならなければなりません。
そのための具体的な方法が、「隣人祭り」であり「婚活セミナー」であり「グリーフケア・ワーク」なのです。
わたしたちには、無縁社会をなくし有縁社会を創ってゆく結縁力をもっと身につける必要があります。「遠い親戚より近くの他人」という諺がありますが、無縁死を迎えないために、今後は「遠い親戚」も「近くの他人」も大切にしなければなりません。そのための冠婚葬祭であり、隣人祭りです。すべては、わたしたちの結縁力にかかっています。
親戚も他人も大事
何よりも家族が大事 縁(えにし)むすべよ 庸軒