第3回
佐久間 庸和
「波の上ビーチで考える」

 

 沖縄料理が大好物です。特にゴーヤーチャンプルーとかフーチャンプルーなどの料理が好きで、いくらでも食べられます。「チャンプルー」とは「チャンポン」と同じで「混ぜ合わせ」といった意味ですね。このチャンプルー文化は、沖縄が世界に発信すべきものではないでしょうか。
 わたしは那覇の「波の上ビーチ」をよく訪れます。美しい海が見えますが、その海の向こうには、中国最大の都市である上海があります。
 波の上ビーチの隣は神社。イザナミノミコトを御祭神とする波上宮です。その隣にはお寺があります。真言宗高野山派の波上山護国寺です。さらにその隣には孔子廟と至聖廟。孔子と道教の神々がともに祀られています。
 いかにも「守礼之邦」と呼ばれる沖縄らしいですが、ここでは、わずか数百メートルの圏内に神道、仏教、儒教、道教の宗教施設が隣接しているのです。いわば異なる宗教が共生しているのです。まさに「沖縄のチャンプルー文化ここにあり!」を見せつけられる思いがします。ここではすべてが「&」です。
 かつて、わたしは『ユダヤ教vsキリスト教vsイスラム教』(だいわ文庫)という本を書きました。三つの一神教の間には「vs」が入れられています。3宗教の歴史および現状を見ればその通りだからです。このままでは人類社会が存亡の危機を迎えることは明らかです。
 その後、わたしは日本人の「こころ」に多大な影響を与えてきた神道、仏教、儒教についての本を書きました。そして、それらの間には「&」を入れました。これまた、日本における3宗教の歴史および現状を見ればその通りだからです。聖徳太子によって、神仏儒は平和的に共存してきたのです。日本の冠婚葬祭を見れば、そのことがよく理解できるでしょう。そして、なんとか日本以外にも「&」が広まってほしいと、わたしは願っています。「vs」では人類はいつか滅亡してしまうかもしれません。しかし「&」なら、宗教や民族や国家を越えて共生していくことができます。
 ユダヤ、キリスト、イスラムをはじめ、ありとあらゆる宗教の間に「&」が踊り「&」が満ちあふれた「アンドフル・ワールド」。そんな「こころのチャンプルー」について、波の上ビーチで海を眺めながら考えました。