2008
09
株式会社サンレー

代表取締役社長

佐久間 庸和

「どうなる?ネクスト・ソサエティ

 こころの未来を創造せよ!」

●「未来」とは何か

 この4月から、わたしは北陸大学未来創造学部の客員教授を務めています。また、京大教授の鎌田東二先生とのご縁で、京都大学こころの未来研究センターの共同研究員にもなりました。
 「未来創造」に「こころの未来」、どちらにも「未来」がつきます。そういえば、わたしが最初にサンレーに入社した際、未来開発室という部署が設置され、そこの室長になったことを思い出しました。どうやら、わたしは「未来」と縁があるようです。
 では、これから、わたしたちの未来はどうなるのでしょうか。サンレーグループの未来は?日本の、そして、世界の未来は?

●100年後は、どうなるか

 わたしたちの未来は、どうなるか?それを考える前に、過去の未来予測について見てみましょう。1901年の「報知新聞」では、100年後の日本の姿を予想しています。
 それによると、たとえば7日間で世界一周......これはもう実現しています。機械で温度調節した空気を送り出す......これも冷暖房で実現していますね。
 他に実現できていないものでは、動物と会話ができて、犬がお使いに行く。蚊やノミが絶滅するというのもありました。いろいろと見ていくと、実現率は70パーセントだということがわかります。
 先日お会いした伊藤忠商事の丹羽宇一郎会長は、21世紀でも「今、こうなったらいいな」と思うことの70パーセントは実現できると述べられています。
 マスコミなどが、今世紀に何が起きてほしいかというアンケート調査をすると、車が空を飛ぶようになる、ゴミが資源になる、太陽エネルギーで、宇宙からコードレスで電気を取る、自動翻訳機ができて言葉の壁がなくなる、などなどの意見が多いようです。それらの70パーセントが実現できる可能性があるというのです。
 また丹羽会長は、今後はライフサイエンスの分野で技術革新が起こると予想しています。

●「ヘーゲルの弁証法」で未来を読む

 わたしは、今後のビジネス・トレンドを読むのに、ドイツの哲学者ヘーゲルの思想に注目しています。最近はIT業界を中心にしてヘーゲル哲学、とくに弁証法がビジネス理論においても有効であるとされています。
 ヘーゲルは、歴史は直線として進むのではなく、螺旋状に進む、としています。そこでは、「正」「反」「合」として、古いものが否定を含んだ形で再登場するとされます。
 たとえば、かつての「ペンフレンド」が「メル友」になり、「御用聞き」がアマゾンなどの「コンシェルジェ・サービス」になる。ITに限らず、かつての「よろず屋」がいったん否定されたうえで「コンビニ」として歴史に再登場する。
 このように、ヘーゲルの弁証法によってビジネスの未来形、社会のトレンドはある程度読めるのではと思っています。

●歴史の境界を超える「ドラッカーの法則」

 ヘーゲルと並んで、未来を読むための最高の思想家は、ドラッカーです。彼によれば、西洋の歴史では、数100年に1度、際立った転換が行なわれるといいます。
 世界は、「歴史の境界」を越えるのです。そして社会は、数10年をかけて、次の新しい時代のために身繕(みづくろ)いします。世界観を変え、価値観を変える。社会構造を変え、政治構造を変えます。技術や芸術を変え、機関を変えます。やがて50年後には、新しい世界が生まれるのです。
 たとえば、1455年のグーテンベルクによる植字印刷や印刷本の発明の約半世紀後にはルターによる宗教改革が起こりました。
 また、1776年にアメリカが独立し、ジェームズ・ワットが蒸気機関を完成し、アダム・スミスが『国富論』を書きました。その半世紀後、何が起こったか。すなわち、産業革命が起こり、資本主義と共産主義が出現しました。
 さらに、世界初のコンピューターであるENIACが完成したのは1946年ですが、そのちょうど50年後、インターネットが世界中に普及しました。
 イノベーションの50年後、社会が変化するというのが「ドラッカーの法則」です。先日、全互連が創立50周年を迎えました。すなわち、初めて冠婚葬祭互助会がこの世に誕生してから半世紀が経過したわけで、社会がこれからどう変化するかに大いに注目しなければなりません。

●ネクスト・ソサエティとは何か

 ちなみに、ドラッカーの遺作は『ネクスト・ソサエティ』という本です。この本でドラッカーは、「少子高齢化社会」と「知識社会」こそ未来社会の二大潮流であり、この二つの流れに乗らなければ成功できないと喝破しました。
 わたしは2001年に社長に就任しましたが、さまざまなドラッカー理論に基づいて当社の経営戦略を定め、『ハートフル・ソサエティ』という、『ネクスト・ソサエティ』のアンサーブックまで上梓しました。そこでは、「おめでとう」と「ありがとう」に満ちた心ゆたかな社会こそ、次なる社会であるというサンレー思想を提示しています。
 最後に、フランスの思想家モンテーニュは「賢い人は将来のことを予想したり心配したりしない」と述べています。また、ある哲学者は「将来は予想するものではない。創造するものだ」と語っています。
 まったく同感です。未来は予想するものでも、想像するものでもありません。自ら創造するものなのです。
 わたしたち自身が未来を創造するのです。ぜひ、冠婚葬祭を通して良い人間関係づくりのお手伝いをしながら、日本人の明るい「こころの未来」を創造していこうではありませんか!

   未来など予想するのは愚か者
       自ら創れ!こころの未来  庸軒