2007
08
株式会社サンレー

代表取締役社長

佐久間 庸和

「自助・扶助・互助の三位一体で

 弱きを助ける社会をつくろう!」

●助け合うことの大切さ
 最近の台風4号や新潟中越沖地震を被害の報道にふれるたびに、先の能登半島地震でサンレーグループの皆さんが見舞金で被災社員を応援したことを思い出します。
 困った人がいれば、救いの手を差し伸べる、また、自分が困ったときには他人から助けられる。まさに助け合うことは、人間の一番善良な部分の表れです。
 その意味でも福祉というのが重要です。北九州で、生活保護を申請したにもかかわらず断られ、亡くなった人がいたことは大変悲しいことだと思います。

●弱者を助けに助けた上杉鷹山
 困った者、弱い者を大いに助け続けた人物が、かの上杉鷹山でした。鷹山は、米沢藩の改革を行ったとき、まっさきに藩内の身体障害者に対する虐待を禁止しました。
 病人も助けました。鷹山は藩内各地に官選の医師を置いて、彼らに住宅地を与えるなどして厚遇しました。そのために、多くの病人の命が救われたのです。
 鷹山はまた、「間引き」を禁止して、保育手当を支給しました。江戸時代にあって、堕胎としての間引きは日常化していました。その要因は、子どもを産んでも育てられない生活の貧しさにありました。
 鷹山は熟慮と協議を重ねた結果、育児資金をやりくりし、子どもを育てられない貧しい者にこれを与えることにしました。そして前後30年にもおよぶ努力の結果、ついに米沢藩における間引きの根絶に成功したのです。

●年金で老人を助ける
 さらには、老人を助けました。200年以上前の米沢において、働けなくなった老人は、「口減らし」のためにしばしば野山に捨てられました。もちろん、生活苦ゆえです。これを憂えた鷹山は、90歳以上の者には亡くなるまで食べてゆける金銭を与えました。現在でいう「年金」です。
 70歳以上の者に対しては、村で責任をもって、世話をすることを決めました。鷹山自らも敬老に努め、老人を大切にする孝子の褒賞に努めました。こうして、忌まわしい悪習を根絶することに成功したのです。

自助・扶助・互助の三位一体
 このように鷹山は、身体障害者、病人、妊婦、赤子、老人といった社会的に弱い立場の人々を助けに助けたハートフル・リーダーだったのです。しかし、その福祉のすべてを藩財政で負担することは不可能であり、次の三つの「助」を打ち出しました。 すなわち、 一. 自助。すなわち、自ら助ける。 二. 扶助。藩政府が手を伸ばす。 三. 互助。互いに近隣社会が助け合う。
 これら三つによる三位一体で、米沢藩の福祉政策は奇跡の成功を収めたのです。
 社会的存在である人間にとって、一番大切なものは「思いやり」です。それを形にする具体的な方法論として、自助・扶助・互助の三位一体を考える必要があります。

●一冊の本との出会い
 最近、一冊の本と出会いました。『あなたの夢はなんですか? 私の夢は大人になるまで生きることです。』(池間哲郎著・致知出版社)という本です。
 本のタイトルからして泣けてきます。本を開くと、また泣けます。マイナス30度にもなるモンゴルの厳しい冬、マンホールの中で暮らす子どもたち。ひもじさのあまり、ビニールを噛んで我慢する少年。そんな信じられないような写真が目に飛び込んできます。
 著者は、沖縄を拠点に、アジアの貧困地域に暮らす子どもたちの支援活動を命がけで続けているそうです。なぜなら、「見てしまったから。知ってしまったから」だというのです。まさに「義を見てせざるは勇なきなり」の精神です。

●おにぎりは、助け合いのシンボル
 どんなに苦しくても懸命に生きるアジアの子どもたちの話をぜひ、わが娘たちにも教えてやろうと、自宅でこの本を見せました。すると、妻も二人の娘も、著者の講演を聴いたことがあるというのです。
 マンホールチルドレンについては私よりも詳しくて、驚きました。そして小学生の二女などは、毎週1回、弁当のおかずを抜いて「おにぎりの日」をつくり、おかず分のお金をモンゴルに寄付しているとか。
 おにぎりといえば、最初にふれた生活保護を受けられずに亡くなった方が「おにぎりが食べたい」と言って絶命したとか。そのことをテレビのニュースで知った中学生の長女はショックを受け、コンビニでおにぎりを買ってきて、自分なりに供養したようです。
 考えてみれば、災害の時も、葬儀の時も、何かあったら近所の人が集まってきて、おにぎりを作って、みんなに配る。おにぎりとは、助け合いのシンボルかもしれません。

●大いなる互助社会に向かって
 わたしたちの互助会事業というのは、まさに「助ける」ことが仕事です。経済的な余裕がなくて結婚式や葬儀があげられずに困っている人をはじめ、結婚相手がいなくて困っている人、年を取って余った時間を持て余して困っている人。ぜひ、いろいろな人たちを助けてさしあげましょう。
 そうすれば、大いなる互助のシステムが社会的に発動し、結局は自分自身を助けることにもなるのです。

 人助け 情けは人のためならず
      自ら助け 互いに助く  庸軒