32
一条真也
グリーフワーク

 

今後の葬祭業においてグリーフワークが重要である。別にスピリチュアルカウンセラーのように「霊」を持ち出す必要はない。仏教やキリスト教の中には、そのノウハウがたくさんある。また、哲学や心理学や文学も役立つ▼死別の悲しみを癒すヒントを得るべく古今東西の本を読んだ。その結果、次のように思い至った。親を亡くした人は、過去を失う。配偶者を亡くした人は、現在を失う。子どもを亡くした人は、未来を失う。恋人や親しい友人・知人を亡くした人は、自分の一部を失う▼配偶者を亡くした人は立ち直るまでに平均三年を要し、わが子を亡くした人は十年を要するという。愛する者を亡くした時、それはまさに人間の心が壊れかける非常事態であり、その「癒し」の装置として葬儀があるのだ▼そんな想いが募り、このたび『愛する人を亡くした人へ』(現代書林)という一書を上梓した。日々の葬儀で遺族の方々と接する中で、少しでも心を軽くすることができたらと願って書いた▼典型的な「労働集約型産業」から、1級葬祭ディレクターに代表される「知識集約型産業」へと進化した「冠婚葬祭業。さらに、思いやり、感謝、感動、癒しの「精神集約型産業」にしんかする鍵こそグリーフワークにある。(一条)
2007年8月10日