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一条真也
数の世界
この数ヵ月間、数字にハマっている。天才数学者の数奇な運命を描いてアカデミー作品賞を受賞した映画「ビューティフル・マインド」を観て、数学の魔力に取り憑かれて以来である。▼最近、一般人向けの数学本が書店に目立つが、それらを買い求め乱読した後は、学生時代の教科書を引っ張り出し、例題を解いてみたりしている。▼正直言って、昔は苦手だった数学を面白く感じる自分が意外だ。ユークリッドやパスカルにガウス・・・・・・彼らの業績に受験とは無縁で接してみると、数学ほど想像力を刺激する「遊び」はないと実感する。▼そう、数学は数の遊びだ。「すべては数である」とはピタゴラスの言葉だそうだ。一人の人間は、年齢・身長・体重・血圧など様々な数で表されるし、企業も売上げ・利益・株価などで、国家だって人口・GDP・失業率といったぐあいに諸々の数に置き換えられるのである。数学の難問は解けなくても、せめて自分と会社と日本に関わる数はなるべく多く頭に入れておきたい。▼考えてみると、人生の区切りとしての通過儀礼も数の世界だ。七五三をはじめ、二十の成人式、六十一の還暦、七十の古希、七十七の喜寿と、長寿祝いは百の上寿まで続く。四十九日や十三回忌に代表される追善供養や年忌法要も数のオンパレードだ。人は死ぬまで、また死んだ後も数と関わってゆくのである。
2002年8月10日