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一条真也
韓国で礼を語る

 

韓国に行ってきた。かの地の新聞社や大学から招かれ、講演および特別講義を行ったのである。プレスセンターやいくつかの大学で、日本の冠婚葬祭について語るとともに、韓国の冠婚葬祭業の人々と親交を結んだ▼韓国には互助会がすでに二百社以上も存在する。葬祭業の最大手は三星、二番手は現代、つまり国を代表する巨大資本が葬祭業を営んでいるのだ。葬礼学科を持つ大学が九校もあり、さらに増え続けてゆく。葬礼歴史博物館まで開設されるほど、儒教の伝統を持つ韓国は葬儀を重視する▼最終日、ソウルの国立墓地を参拝した。おびただしい数の兵士たちの霊前で手を合わせながら、靖国神社の英霊を想った。国は違えど、そこには死者たちがひっそりと眠って、生者の動向をうかがっている。靖国問題にしろ、竹島問題にしろ、日韓両国の間に横たわる問題は多い▼しかし、はるか昔、百済から儒教とともに「礼」が伝来し、日本で冠婚葬祭の文化が花開いたのである。とてつもない心の贈り物を韓国は日本に与えたのだ。その韓国で冠婚葬祭を語るとは、何たる光栄だろうか。私は次の歌を詠んで、大学の講義を終えた。「日の本に/礼を伝えし/韓国(からくに)で/礼を語れり/カムサハムニダ」(一条)
2006年6月10日