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一条真也
会社は社会のもの

 

すべてはインターネットから始まった。この新時代の情報メディアを評論家の立花隆氏は「どこでもドア」にたとえた。他にも「タケコプター」をはじめ、ドラえもんがポケットから出す夢のグッズは一三00以上にのぼるという▼プロ球団の買収構想、ニッポン放送株大量取得、衆院選出馬など、ホリエモンはポケットから次々に目立つアイテムを出した。それらが株価をふくらます仕掛けだと聞けば、本家のドラえもんは嘆くに違いない▼IT界の寵児ともてはやされた三十代前半の若者は『稼ぐが勝ち』なる著書を出し、「人の心はお金で買える」と言い切った。だが、行く先に待っていたのは「どこでもドア」でも「ライブドア」でもなく、刑務所の扉「プリズンドア」だった▼彼は大のマンガ好きだというが、『ドラえもん』は読んでいたのだろうか。それは知らないが、彼が真に読むべきは、同じ「ドラ」でも、昨年逝去した世界最高の経営思想家ドラッカーの本だろう▼マネジメントという概念を発明し、「人が主役」の経営を主張した人物だ。株の売買のみによる利益追求を戒め、一貫して産業社会における人間の幸福を考え続けた。「会社は社会のもの」と喝破したドラッカーの言葉が今、強い輝きを放つ。
2006年2月10日