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一条真也
冠婚葬祭映画

 

映画「エリザベスタウン」を観た。「人生最悪の日から始まる奇跡のような6日間」を描いた作品で、いま最も旬な美男俳優のオーランド・ブルームが主演し、プロデュースはあのトム・クルーズだ▼非常に面白かった。同時に仕事の上でも貴重な情報をふんだんに得ることができた。何しろ、アメリカにおける最先端の結婚式と葬儀が詳細に紹介されているのだ。ともに某シティホテルで行われる▼結婚式の方は全館が舞台。新郎新婦のアツアツの写真を大きく伸ばしたポスターをホテル中に張りめぐらす。宿泊客は当然、二人の顔を知り、ロビーや廊下などで見かけたら祝福の言葉をかける▼葬儀もホテルの大宴会場で行う。参列者は会食し、故人の思い出についてスピーチし、歌い、踊る。日本のように暗さを伴わない明るい送別会そのものだ。骨壷も洒落ていて、故人のお気に入りだった映画スターやミュージシャンの顔入りのものなどもある▼主人公の青年は仕事の失敗や失恋などで失意のどん底だったが、父の葬儀を執り行なうことにより、魂が深く癒される。葬儀は故人である父にとっての通過儀礼であることはもちろんだが、息子にとっても大きな通過儀礼であったのだ。究極の冠婚葬祭映画である。
2005年12月10日