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一条真也
ローマ人に学べ

 

第二次小泉改造内閣がスタートした。一年前の内閣改造・党役人事の狙いは「選挙に勝つこと」だった。今回の人事の目的は「郵政民営化法案」を成立させること。目玉はないが、郵政民営化を仕上げるという観点からは極めて実務的な、手堅い布陣である▼先日、ローマで作家の塩野七生さんにお会いした。現在は「ローマ人の物語」を執筆中で、政治家や経営者に愛読者が多い。古代ローマの興味深いお話をたっぷりと聞かされたが、最も印象に残ったのが、ローマ人が自己改革の勇気を持っていたという点である▼史上最大の帝国を築き上げたローマも失敗とは無縁でなく、その歴史は失敗と蹉跌の連続であったとさえ言える。ただ、ローマ人たちは自らの失敗を認め、改革を行なう勇気を失わなかった。ローマが千年以上にわたって続いたのは、決して運がよかったからでもないし、ローマ人が特別だったからでもない。自分の姿をありのままに直視し、それを改善していこうという勇気が、ローマをあれほど長続きさせたのである▼私たち日本人は、自らの失敗を認め、それを政治改革に結びつけられるだろうか。改革実現内閣と呼ばれているが、問題は郵政民営化だけではないのだ。今は、期待したい。
2004年10月10日