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一条真也
SARSの悪夢

 

SARS(新型肺炎)の猛威は悪夢を見ているようだ。WHO(世界保健機関)は、「われわれは、今や地球規模で感染症による危機に瀕している。もはやどの国も安全ではない」との警告を発している▼グローバルな世界は、ヒト、モノ、カネが国境を越えて活発に動く。それだけでなく、テロリスト、武器、麻薬にウイルスといった好ましくないものまで激しく移動するのだ。謎の病原体に地球人類が脅えている▼世界的な疫病といえば、十四世紀半ばにヨーロッパ全域を襲ったペストの大流行が思い浮かぶが、英仏の百年戦争の開始時期と重なり、暗黒の時代を象徴した。二十世紀では、第一次世界大戦中にインフルエンザが突如として登場し、細菌兵器説も出たという▼二十一世紀になって初めての戦争がイラクで始まったとたん、SARSの登場である。どうも、戦争と病気の流行には深い関係があるようだ。仲間内で殺し合う愚かな人類に対する神の怒りか、本当に開発された細菌兵器なのか、それとも・・・・・・▼SARSの発生国とされ、被害も甚大な中国では、なんと結婚式や葬儀が禁止になった地域もある。人が集まると、感染拡大につながるというのだ。やはり、冠婚葬祭は平和の象徴なのである。
2003年6月10日