第5回
一条真也
「孤独葬を知っていますか?」
最近、参列者が一人もいないという葬儀が増えてきました。
そんな孤独な葬儀を「孤独葬」と呼びます。私も立ち会ったことがありますが、故人が気の毒で仕方ありませんでした。
亡くなられた人には家族もいたでしょうし、近所の人や友人、仕事仲間もいたことでしょう。配偶者や子、孫もいたかもしれません。なのに、どうしてこの人は独りぼっちで旅立たなければならないのかと思えてならないのです。
北九州市をはじめ、「孤独死」が問題となっていますが、それ以上に問題なのは「孤独葬」だと思います。なぜなら、誰でも人は一人で死んでいきます。でも、誰にも見送られずに旅立つというのはあまりにも寂しいではありませんか。「この人は何のために生きてきたのだろう」と思うと、本当にかわいそうで涙が出てきます。
映画「おくりびと」が世界的な話題になりましたが、人は誰でも「おくりびと」です。そして最後には「おくられびと」になります。
フランスの作家、サン=テグジュペリは「真の贅沢とは、人間関係の贅沢である」と述べましたが、一人でも多くの「おくりびと」を得ることが人間の最高の贅沢ではないでしょうか。