第2回
一条真也
「たくさんの温かい愛に包まれて」
ある結婚式でのエピソードです。新郎新婦は2人とも両親を知りません。身内と呼べる人も誰ひとりいません。同じ児童福祉施設で兄妹のように育った2人は、次第にお互いを意識するようになり、愛を育んで結婚へと至りました。そんな2人を施設の園長さんが親代わりとなって温かく見守ってきました。新婦は同じ境遇の子どもたちのお世話をしたいという夢を持っていました。園長さんが新婦のために短大までの費用を何とか工面した結果、新婦は夢を叶えることができ、現在は自分が育った施設で働いています。
ただ1人の親族もいない2人でしたが、友人、施設の職員、施設の弟や妹が多数出席し、手作りのアットホームな披露宴となりました。両親への花束贈呈のシーンで、2人は園長夫妻に向かって「お父さん、お母さん、今まで本当にありがとうございました」と泣きながら花束を渡しました。夫妻の目にも涙が光っていました。
その結婚式をお世話した「むすびびと」は「今まで家族がいなかった2人には、本当はこんなに多くの家族がいたんだ!」と思ったそうです。そして、たくさんの温かい愛に包まれて夫婦となった2人の幸せを心から願わずにはいられなかったのでした。