第1回
一条真也
「むすびびと、おくりびと」

 

 もう20年以上も前に、著書で初めて「ハートフル」という言葉を提示しました。今、皆さんの心を豊かにする「ハートフル・エピソード」の連載がスタートします。
 主に結婚式やお葬式の話を中心に選びます。わたしは全国で冠婚葬祭業を営んでいて、多くのスタッフから心あたたまる実話を聞き、その度に目頭を熱くしているからです。映画「おくりびと」が世界中の人々の心を打ちましたが、冠婚葬祭とは「愛」と「死」のセレモニーです。そこには、思いやり、感謝、感動、癒しなど、さまざまな心が込められています。お葬式の世話をする「おくりびと」は故人の魂を送る人ですが、結婚式のお世話をする人を「むすびびと」と呼びたいと思います。なぜなら新郎新婦の魂を結ぶからです。
 今回は、某「おくりびと」から聞いた話を紹介します。ある結婚間近のカップルがいましたが、男性が事故で亡くなられました。お母さんと彼女の要望で、故人にタキシードをお着せしました。そしてウエディングドレスを着た彼女と正装したお母さんは故人を抱き起こし、3人で記念写真を撮られたそうです。これから、このような心に響くエピソードの数々を毎月お届けします。