第3回
一条真也
「礼法は魔法である」
前回、礼法こそは最強の護身術であると述べました。さらに、わたしは、礼法の正体とは魔法に他ならないと思います。フランスの作家サン=テグジュペリが書いた『星の王子さま』には「本当に大切なものは、目には見えない」という有名な言葉が出てきます。
本当に大切なものとは、人間の「こころ」に他なりません。その目には見えない「こころ」を目に見える「かたち」にしてくれるものこそが、立ち居振る舞いであり、挨拶であり、お辞儀などではないでしょうか。
魔法使いの少年を主人公にした『ハリー・ポッター』シリーズが世界的なベストセラーになりましたが、「魔法」とは正確にいうと「魔術」のことです。西洋の神秘学などによれば、魔術は人間の意識、つまり心のエネルギーを活用して、現実の世界に変化を及ぼすものとされています。ならば、相手のことを思いやる「こころ」のエネルギーを「かたち」にして、現実の人間関係に変化を及ぼす礼法とは魔法そのものだと思いませんか。