2007
株式会社サンレー
代表取締役社長
佐久間 庸和
PHP研究所刊行
『2007年トップが綴る 仕事の指針 心の座標軸』より[1月1週目]
「人の道」を売る
私の会社は冠婚葬祭互助会を業としている。会員様に結婚式や葬儀を安価にあげていただくために、毎月いくらかの会費をいただいている。当然、会員を募集する営業部隊もある。私が常に営業スタッフに言うことは、この仕事は「商売」というより「人助け」であるということ。
特に、葬儀においてそれがいえる。「礼」という人の道を重んじた儒教は孔子(こうし)によって始まったが、孔子の死後百年たってから孟子(もうし)が現れ、何よりも「親の葬礼」を人の道の第一に位置づけた。人生で最も大切なことは、親のお葬式をきちんとあげることなのだ。逆にいえば、親のお葬式をあげられなければ、人の道から外れてしまうのである。
人間として、人の道から外れるほど悲惨で気の毒なことはない。その反対に、世の人々が人の道から外れることを防ぎ、堂々と人の道を歩んでいただくお手伝いをすることほど、世のため人のためになる行為はないと心の底から思っている。
互助会に入ることは、いわば人の道を歩むための自賠責保険や義務教育のようなものなのである。こう思い至ったとき、私は当社のあまりにも大きなミッション(使命)に気づいた。それ以降、互助会の募集をすること、また解約を希望される会員様を心から説得し思いとどまっていただくこと、これはそのまま「人助け」につながるのだと毎日のように言っている。
マネジメントの父であるピーター・ドラッカーは、「重要なことは自らの事業は何かを知ることである」と述べた。当社の事業とは「人の道」を売ることだと信じている。