2006
株式会社サンレー
代表取締役社長
佐久間 庸和
PHP研究所刊行
『2006年トップが綴る 仕事の指針 心の座標軸』より《1月3日》
鳴かぬなら われが鳴こうか ほととぎす
織田信長・豊臣秀吉・徳川家康と言えば、日本を代表する三大英雄である。
性格はそれぞれまったく異なるが、それを詠んだのが有名な次の句である。
「鳴かぬなら 殺してしまえ ほととぎす」
「鳴かぬなら 鳴かせてみよう ほととぎす」
「鳴かぬなら 鳴くまで待とう ほととぎす」
激情の信長、策略の秀吉、忍耐の家康、というわけだ。出典は江戸時代の名随筆で知られる松浦静山の『甲子夜話』とされるが、実によく三人の特徴をとらえており、いつも感心する。
最近になって故・松下幸之助翁の著作をまとめて読む機会を得たが、その中で松翁の、
「鳴かぬなら それもまたよし ほととぎす」
という句に触れ、静かな感動をおぼえた。自然の流れの中で、素直な心でありのままに生きるという人生哲学が滲み出ていて、何とも言えぬ深い味わいがある。そして、私なら何と詠むか。当社の業務内容とミッションとを考え合わせた結果、次の一句が浮かんだ。
「鳴かぬなら われが鳴こうか ほととぎす」
当社はホテルや冠婚葬祭業をはじめ、さまざまなサービス業を営む会社である。そこでは何よりも思いやりの「ホスピタリティ・マインド」や「サービス精神」が必要とされる。常に気をつかって、お客様に喜んでいただかなければならない。自分から動いて世界に関わっていけば、もしかしたら世界が変わるかもしれない。そんな願いを込めて、事あるごとに社員のみなさんに披露している。